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鄭大世氏 一人で韓国渡った自分に北朝鮮監督からまさかの笑顔…タクシーで号泣「周りが見れていなかった」

[ 2024年3月23日 17:46 ]

鄭大世氏
Photo By スポニチ

 元北朝鮮代表で、川崎Fや清水などでプレーした鄭大世氏(40)が、23日までに自身のX(旧ツイッター)を更新。21日、日本テレビで生中継した26年W杯アジア2次予選・日本―北朝鮮戦の解説を務めたことについて「自分の人生において、とてつもなく大きく偉大な仕事となった」と思いをつづった。

 「2005年、朝鮮大学校の3年生の時、埼玉スタジアムゴール裏の北朝鮮の応援席で日本代表対北朝鮮代表(2-1で日本勝利)を見て『在日の北朝鮮代表選手たちが日本代表とここまで対等に渡り合えるのか』と感動していた20才のイガグリ坊主のストライカーはやがてプロ選手、北朝鮮代表選手となった。そして6年後の2011年、特別な想いで、特別な地、埼玉スタジアムで日本代表を相手に戦った」と鄭氏。

 「韓国籍の自分は北朝鮮代表になるために針の穴を通すような作業、過程を経て多くの関係者に大変世話になった」というが「その後、2013年に韓国のパスポートを取得し事実上の北朝鮮代表を引退。代表引退時は北朝鮮代表は弱いし報酬も貰えない。ユニフォームもカッコ悪い。環境も劣悪だし代表選手としての価値に意味はない。と自分に言いきかせて韓国へと渡った」と、韓国で新たな選手生活をスタートさせ、セカンドブレークをつかみとったことを振り返った。

 2022年、未練なく現役を引退した鄭氏。「自分は自分の得になることを最優先に選んできた人生だった。だから死ぬ時には自分の人生には後悔などない。と思って生きてきた。裸で生まれてきてサッカーと出会い、サッカーのおかげで多くのものを得てきた。家族が横にいる心地良いセカンドライフ。目標を設けず、ただただ引退後の生活を楽しんでいた」とつづった。

 そんな中での今回のオファーに「夢のような話が舞い込んできた」といい「韓国籍の自分が日本代表戦の解説をできるなんて信じられないこと。ましてや相手は北朝鮮代表。ただただその事実に歓喜した」と喜びを記した。

 13年の韓国のパスポート取得は誰にも相談せず、一人で決断したようで「尽力してくれた関係者はもちろんのこと北朝鮮代表幹部にまで衝撃を与え、いわゆる『裏切り者』になったと思う」と後ろめたさも。「当時は水の流れのように気ままに流されるだけで周囲に義理や礼節を尊重した行動、態度を取れなかったことを今、死ぬほど後悔してる。あれから12年間、自分の振る舞いに後悔の念と罪悪感を抱きながら今を生きてる」と記した。

 20日の両国代表の前日練習を見た鄭氏は「日本代表は相変わらず光り輝いていた。次に登場した北朝鮮代表、初めてピッチの外から見る彼ら北朝鮮代表選手は素直にカッコよかった。キレのある動き、迫力、揃った練習着。記者会見ではシンヨンナム監督と目があった。向こうからニコッと微笑んでくれてすごく嬉しかった練習後のミックスゾーンでは自分が代表選手だった時の若手選手や当時の団長とも会えた。一番驚いたのは2010ワールドカップで一緒にプレーしたCBのチョルチンがコーチとなっていたこと。おもわず興奮して声をかけ一緒に写真を撮った。代表引退から12年、北朝鮮代表と触れあえたことで当時の様々な記憶、想いがフラッシュバックした」と、さまざまな思いが。

 そして「帰りのタクシーの中で自然と嗚咽が止まらなかった。泣きじゃくった。運転手に気づかれないように泣きに泣いた。涙が止まらなかった。自分がベストだと思ったサッカー人生だったけれども、今、やっと自己中心的な判断が周囲だけでなく自分自身を傷つけていることに気づいた」と号泣。「なんであの時もっとこうしなかったのか。20代は自分が上昇することに躍起になり周りが全く見れていなかった。北朝鮮代表は環境も酷く、Jクラブなどとの違いに不満ばかり口にし、ビルドアップすらまともにできない同僚選手たちに不満を抱き、報酬はなく名誉だけの代表と感じていた。代表選手なんて辞めても後悔なんてすることないと思っていた」と、当時の自分を悔やんだ。

 鄭氏は「しかし今思う。北朝鮮代表を、国を背負う戦いをもっと楽しめばよかった。ポジティブなエネルギーを全身から発し代表選手ということをもっと誇りに感じればよかった。もっと国を背負う代表選手という尊さを大切に咀嚼し美味しく飲み込めばよかった」とつづった。

 「今回のワールドカップ予選は自分に本当に多くのことを気づかせてくれた。北朝鮮代表は相変わらず不器用だったけど勢いに乗った時の身の毛がよだつような大迫力は健在、とても爽快だった」とし「自分を取り巻く環境や状況は大きく変わったけど、感じたこと、サッカーへの想いはイガグリ頭の20才の時、ゴール裏で必死に応援していた時と何ら変わらない。これからも自分はサッカーとともに生きていく。多くの人々に感謝を忘れず自らを律して」と自信を戒めた。

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