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J2町田 10試合を終えて堂々首位 元教員・黒田監督の”必勝カリキュラム”に迫る

[ 2023年4月21日 05:10 ]

<町田・大分>勝利を喜ぶ町田の黒田剛監督(右)とFWエリキ
Photo By スポニチ

 J2は10試合を終えて、昨季15位の町田が首位と好スタートを切った。指揮を執るのは高校サッカー強豪の青森山田で29年間指導者を務め、プロに転身した黒田剛監督(52)。2、3月の月間優秀監督賞を受賞した、異質なキャリアを持つ指揮官の指導に迫る。

 異例の転身で注目を集めた黒田監督率いる町田が、戦前の懐疑的な予想を覆している。10試合の戦いぶりから戦国リーグの首位を走る要因を探った。

 <1>徹底した堅守 リーグ最少の4失点で、複数失点は一度もない。黒田監督は守備を車の運転に例える。「慣れてくるとシートベルトもしなくていい、ウインカーも出さなくていいやと横着を始め、それが事故につながる。失点も同じで必ず原因がある」。就任時に昨季の50失点全てを確認し、悪い習慣を排除。マーク時の体の向きやボールを失った直後の動きなど細部にこだわり、被シュートゼロを求める。

 <2>確率を高める攻撃 最少得点を守り切るサッカーでは「ゴールは水もの。不確定要素が多い中で、できるだけ確定要素に変えていく作業は、練習でしか積み上げられない」。ある程度は準備もできるセットプレーを重視。直接対決で首位を奪い返した16日の大分戦では、選手に演技力も求めた「トリックCK」を成功させて主導権を握った。またチームの16得点中15点がペナルティーエリア内からのゴールでリーグ最多。確率の低い遠めのシュートではなく、精度の高い攻撃を求めている。

 <3>プロ仕様の人心掌握術 当初は高校生と違うプロとの接し方に戸惑うも、相手のプライドを尊重しながら会話を重ね距離を縮めた。日々のミーティングは「パワーポイント」を活用し情報を整理して伝え、伝達のタイミングにも注意を払う。「モチベーションにも波はある。あえて試合直前に“えっそうなんだ”と思わせてギアを入れ直す」という方法も用いる。J2優勝という目標に向け、「1クール7試合で勝ち点15、6クールで90」などと短期の目標を設定。長丁場のシーズンを乗り越えられるよう工夫している。

 現在は首位を守ること以上に、日々の課題への対応が頭を占めている。「どんな組織も日替わりで表情を変える」。教員として培ったマネジメント力を生かし、Jリーグに新たな風を吹き込んでいる。

 ◇黒田 剛(くろだ・ごう)1970年(昭45)5月26日生まれ、札幌市出身の52歳。登別大谷(現北海道大谷室蘭)―大体大でプレーし、卒業後の93年から指導者に。94年から青森山田のコーチに就任し、翌年監督に昇格。全国屈指の強豪校に育て上げ、全国高校選手権優勝3度(16、18、21年度)、全国総体2度(05、21年)、高円宮杯プレミアリーグファイナル優勝2度(16、19年度)と多くのタイトルを獲得。今季からJ2町田の監督に就任した。

 ≪19人大刷新が奏功≫町田は昨オフ、クラブのオーナーでIT企業サイバーエージェント社長の藤田晋氏がクラブ社長に就任した。J1昇格へ向け進めた3カ年計画の最終年で15位に終わったことから、黒田監督の招へいをはじめ、大型補強を敢行。オーストラリア代表FWデューク、伸び盛りの若手ら19人が新加入するなど大刷新した。コーチングスタッフも一新され、元鳥栖監督の金明輝氏がヘッドコーチとして指揮官を支えている。

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2023年4月21日のニュース