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フライブルク・堂安がサッカー人生を回顧 海外挑戦を両親に反対され「心の中で泣いていた」

[ 2023年1月31日 17:06 ]

日本代表MF堂安律
Photo By スポニチ

 サッカー日本代表MF堂安律(24=フライブルク)がブンデスリーガのインタビューに応じた。幼少期の思い出や香川真司への憧れ、フライブルクでの目標などを語った。

 ――いつからサッカーを始めましたか?
 「3、4歳の頃から週2回、趣味や遊びの感覚でサッカースクールに通っていました。そして、12歳でG大阪のアカデミーに通い始め、その頃からサッカー選手になりたいと考え始めました。G大阪に行ったことは、自分にとって大きなターニングポイントでした」

 ――G大阪のアカデミーに参加してみて、どうでしたか?
 「私が11歳のとき、母に(G大阪から)電話がかかってきて、とても嬉しかったのを覚えています。兄はG大阪に行きたかったのですが、C大阪のアカデミーに参加していました。今は五分五分ですが、当時のG大阪は、C大阪よりはるかに強いチームでした。母もそれを知っていて、もしG大阪に行く機会があれば行きなさい、と言ってくれたんです。とても嬉しかったです」

 ――今振り返ってみて、アカデミーに所属していたことで選手としてどのような成長が得られたと思いますか?
 「私は選手としてプレーはしていたものの、最も重要な選手ではありませんでした。11人のプレイヤーのうちの1人に過ぎませんでした。でも、2、3カ月後にはすでにU―15のトップチームでプレーしていました。13歳のときに、2つ上のチームであるU―15でプレーしていたので、その分成長も早かったです」

 ――当時の監督を覚えていますか?
 「G大阪のアカデミーとG大阪のU―15の監督もされていた鴨川監督が印象に残っています。自分が一番だと思っていても、自分より優れた人がいる。世界を見なければならない。だから満足せず、トレーニングをし続け、より優れたプレーヤーに成長するために常にハングリー精神を持ちさない。と言われました。“よくやった”と言われたことは一度もありません。例えばワールドカップでは、自分より優れた選手をたくさん見ました。監督の当時の言葉は、いつも私の心と頭の中にあります。実は、ワールドカップ後に彼に会い、話をしました。特別なことは何もなく、子供の頃と同じような感覚で、良い時間を過ごしました。ワールドカップの後でしたが、“よくやった”とは言われませんでしたが、将来言ってもらえるように頑張りたいです。そして、いつか彼が一緒に写真を撮りたいと言ってくれたら嬉しいです」

 ――トップチームに上がった時のことを覚えていますか?
 「私が16歳の時、トップチームのトレーニングキャンプで、ケガ人が2、3人出てしまい、11対11でプレーするために選手が必要になリました。それで、アカデミーに“アカデミーで一番うまい選手は誰ですか”という電話がありました。鴨川監督ではない別の人が私に電話し、プレーする機会があるので腕試ししないかと声をかけてくれました。正直、このキャンプへの参加でトップチームに上がれるとは思っていませんでした。でも、すごく良いプレーを残した結果、“サッカー選手として契約してください。プロで”と声がかかりました。驚きましたが、自分にとっても、自分のキャリアにとっても最高の瞬間でした」

 ――トレーニングキャンプでの感触はいかがでしたか?
 「あの時は怖いと思わなかったので、正直分からないです。普通、トップチームでプレーしている若手は、こんな風にボールを失いたくないとか、怖がるものですが、あの時の僕は、自分のプレーを見せることができました。あの時の自分と話してみたいぐらいです!トレーニングキャンプの後は、最高の瞬間でした。クラブから電話をもらい、母もすごく喜んでいました」

 ――ヨーロッパでサッカーをするのが夢だったんですか?
 「子供の頃からすでに、ヨーロッパでプレーしたいという夢がありました。当時はFIFA U―20ワールドカップがあったので、自分にはヨーロッパでプレーする資格があることを世界に示したいと思っていました。そんな時、オランダのフローニンゲンが私を欲しいとエージェントに電話をしました。2シーズンプレーをし、素晴らしい時間を過ごすことができました」

 ――ヨーロッパでプレーする機会を得たとき、ご両親はどのような反応をされましたか?
 「最初の5カ月が一番大変でした。両親に“行きたい”と言ったら、泣いて止められましたが、“この話はやめて。行きたいんだ”と言って、海外に飛び出しました。でも正直、心の中では泣いていました。普段泣かない私が、心の中で泣いていたんです。でも、親には“行きたい!”と言ったから、泣いてるとは言えなかったのです。だから、難しい時もありました。でも、チームメイトがとてもいい人で、たくさん助けられました。自分にとってはいい決断だと思っています。5カ月間、“どうしたいのか”と毎日自分自身と向き合いました。その時はとてもストレスを感じていましたが、今振り返ると自分にとって大切な時間でした。あの半年で強くなりました」

 ――ブンデスリーガに所属する8人の選手が、日本代表としてワールドカップで活躍しました。なぜブンデスリーガは日本人選手にとって魅力的なのでしょうか。その中で、香川真司選手はどのような役割を担っているのでしょうか。
 「そうですね、香川真司選手の影響はあると思います。香川選手は当時、日本人選手として最高の選手だったので、多くの日本人選手がブンデスリーガでプレーしたいと感じたと思います。私もその1人で、ブンデスリーガでプレーしたいという夢を持っていました。ビーレフェルトから電話があったときは、とても嬉しかったです。即決でした。1秒後には“行きたい”と思いました」

 ――香川真司選手とは一緒にピッチに立ったことがあるのですか?
 「日本代表で一度だけ一緒にプレーしたことがあります。彼は本当のプロフェッショナルでした。今でも時々連絡を取っています。去年一度だけ一緒に食事にも行きました。彼は私にとっても、多くの日本人選手にとってものアイドルです。彼はとてもいい人で、とても安定した人です。普通、比較的若い人が私と話をするときは、“私は偉いんだ”とアピールすることがありますが、彼はそうではなく、同じ立場で、同じレベルで話してくれます。彼は本当にプロフェッショナルです」

 ――フライブルクのチームメイトとは、ワールドカップ中も連絡を取り合っていましたか?
 「“ワールドカップはどうだった?”と聞かれました。ドイツ戦の後も、多くの選手から“ゴールおめでとう”、“試合に勝っておめでとう”とメッセージが来ました。グニとギュンター(マティアス・ギンター選手とクリスティアン・ギュンター選手)はワールドカップでプレーしましたが、他の選手はプレーしていなかったので、少し応援してくれていました。メッセージが来たときは嬉しかったです」

 ――ピッチ外では何をするのが好きですか?趣味はありますか?
 「シーズン前半は試合が多く、あまり外出の機会がなかったのですが、休みの日に一日中家にいるのは嫌なので、いつも外出したいとは思っています。フライブルクからバーゼルやチューリッヒ(スイス)へは1時間半で行けます。ショッピングが好きなので、洋服を買いに行ったりしています」

 ――ドイツと日本の食文化は大きく異なります。その変化にどのように対応しましたか?
 「食文化の違いは、正直大変です。でも、日本からプライベートシェフを雇い、フライブルクで一緒に過ごしているので、すごく助かっています。本当になんでも作ってくれます。中華料理も、イタリアンですらも彼が作ってくます。ドイツではソーセージとポテトがメインディッシュで、ビールと一緒に食べるのが普通です。普段、シーズン中はお酒を飲まないのですが、シーズン最後の試合の後は必ずビールを飲みます。ビーレフェルトにいたときはブンデスリーガ残留が決まった際、チームメンバーと一緒に飲みました。その時のビールは、冷たくて、おいしくて、とてもよかったです」

――あなたから見て、現在のフライブルクの成功の秘訣は何でしょうか?
 「簡単に言えば、ひとつのチームとして出来上がっていることだと思います。特にベンチにいる選手たちは、ピッチにいる選手たちを後押ししてくれますし、ピッチに入ればきっちり自分の仕事をします。また、私は新人選手ですが、多くの選手は監督と一緒に動いているので、選手が監督の考えを知り、お互いを知り、同じ考えを持っています。それが今シーズン、現時点で非常にうまくいっている理由だと思います」

 ――チームの成功に驚きはありましたか?
 「驚いてはいません。このチームに来る前に監督やスポーツディレクターと話したのですが、彼らは来年トップ6に入ると言っていたので、シーズン前半を終えて、今2位にいることは驚いていません」

 ――フライブルクでプレーするようになって、日本のファン層は広がりましたか?
 「そうですね、特にワールドカップの後は。点を取ったら、試合を見ようと思ってくれるので、シーズン後半もいいプレーをしないと。“あ、やばい!”って思われてしまうので。シーズン前半の調子でいくことは、本当に大事です」

 ――自分のプレーを見るためだけに、みんなが見てくれているというのは、どんな気持ちですか?
 「サッカー選手として、嬉しいことだと思います。もし誰かが自分のプレーを見てくれていたら、それは最高ですね」

 ――改善すべき点はどこだと思いますか?
 「もっとゴールをすることだと思います。ペナルティーエリア内で何度もチャンスがあったのに、それをものにできませんでした。今シーズンは現在4ゴールですが、10ゴールは必要だと思っています。あと6ゴール、これは現実的な目標です。守備の面でも、監督と一緒に改善しだいぶ良くなってきているので、この調子で守備も頑張っていきたいと思います」

 ――クリスティアン・シュトライヒ監督とは良好な関係を築けていますか?
 「最高です。彼の考え方が好きだし、人柄も好きだし、いつも正直で、不満があれば不満であることを示すので、選手にも伝わりやすいです。取り繕ったことは言いません。良いプレーをすれば、とても喜んでくれますし、選手と一緒になって祝ってくれます。ピッチの上でサッカーに集中する姿は、素晴らしいです」

 ――ワールドカップ後の目標は?
 「ワールドカップが終わっても、ハングリー精神を持つことが大切なので、毎日自分に言い聞かせています。今は、観客のために、そして自分のために、より良くなるように自分を追い込まなければならないと思います。それが大事だと思います」

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