新潟がJ2優勝にふさわしいチームであることを証明した23日最終戦
【元アルビ・梅山チェック 23日新潟2―1町田】
6年ぶりのJ1昇格とJ2優勝を決めた後のホーム最終戦。結果が出ていても目の前に試合があれば全力で向かっていく。その姿勢に微塵(みじん)のブレもなく、今季のアルビレックス新潟が全て表現され、J2優勝にふさわしいチームであったことを証明するような試合だった。
特にビルドアップと2つの得点シーンは今季の特長をよく表現している。まずビルドアップ。町田が序盤から機を見ては新潟の最終ラインに対してプレッシャーをかけてきたのは、対新潟で昨年から3連勝していて、その要因が高い位置からのプレッシャーだったからだろう。しかしこの日の新潟は全く動じることなく、落ち着いてそれをパスのテンポで回避してみせた。これは急にパスがうまくなったのではなく、前線から最終ラインまでの全員の背後を狙う動きや意識が、全力で前に出て来ようとする相手の勢いを折る、または分断することにつながって、中盤でフリーなスペースをつくり出していたからだ。
そしていずれも三戸が決めた2つのゴール。前半13分の1点目は自陣でボールを奪ったところからカウンターで決め、後半38分の2点目は守備ブロックをつくった相手に対して、安定したボール保持から縦パスとワンツーで抜け出して決めている。つまり速攻からも遅攻からもゴールを奪える。
特に2点とも三戸の動きとボールコントロールは秀逸だった。最初のタッチでシュートしやすいところにボールを置けているので、どちらも顔を上げてGKの動きを見る余裕があった。全速力で背後を取る動きと、そのスピードとプレッシャーの中での完璧なスキルは、J2のみならず日本トップクラスと言っていい。チームとして戦術でチャンスはつくれても最後にゴールに蹴り込むのは個人のスキルであり、J1での活躍が楽しみな一人だ。
もう一つ忘れてはならないのが、松橋監督のリーダーシップだろう。最後のあいさつで「最初のミーティングで昨シーズンの最終戦の写真をみんなに見せて、ここ(空席の目立つスタジアム)を満員にしよう。その時、何が起きているか想像しよう。というところからスタートした」と話していた。
人の心は正解や正論、指示や命令では動かない。湧き出る本当のモチベーションはストーリーに影響される。そのことを知っている証であり、上から選手を見下ろすのではなく、時に厳しく、時に寛容に、常に選手と伴走しながら状況を観察し、最適な手を打とうとしているのが伝わってくる。監督の描くそのストーリーにJ1での戦いはどう描かれているのか。早くも23年のJ1リーグが楽しみである。
◇梅山 修(うめやま・おさむ)1973年(昭48)8月16日生まれ、埼玉県出身の49歳。福岡、FC東京、V川崎、湘南を経て04年に新潟入り。引退翌年の07年から15年まで新潟市議会議員を務めた。今季から北信越リーグ1部アルティスタ浅間の監督を務め、優勝に導いた。生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ。
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