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HJKヘルシンキ・田中亜土夢が見た、撮った…フィンランドの「今」

[ 2020年4月16日 05:30 ]

3年ぶりにヘルシンキ復帰した田中亜土夢。写真は15年(ゲッティ=共同)
Photo By ゲッティ=共同

 「世界一幸せな国」といわれるフィンランドも、新型コロナウイルス感染症の猛威にさらされている。3月16日に政府から非常事態宣言が発令され、戦後初めて国の緊急備蓄倉庫が開かれ医療物資が病院に運ばれた。昨季までC大阪でプレーし、今季から同国1部HJKヘルシンキに所属するのがMF田中亜土夢(32)。本紙の電話取材に応じ、街の現状などを語るとともに自ら写真も撮影した。

 今年3月にフィンランドのHJKヘルシンキに復帰した田中亜土夢です。3年ぶりに古巣へ帰ってきたんですが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、3月16日に政府から非常事態宣言が発令されました。チームは3月14日からずっと活動休止中で、4月11日に予定されていたリーグ戦の開幕も6月に延期となりました。実際には6月に始まるかも不透明で、どうなるか分からない状況です。

 感染者の数は他の国ほどではないけど、フィンランドの人口が約550万人ということを考えれば、決して少ないとはいえません。3月中旬に非常事態宣言が出たように、国としては早め早めに対処しようとしていることが凄く感じられます。学校や大学が閉鎖され、10人を超える集会の禁止などが言い渡されていて、街中は本当に閑散としています。

 観光客がいないのはもちろん、交通の中心であるヘルシンキ中央駅は閉まっているわけじゃないのに、人はほとんどいませんでした。スターバックスは閉まっていて、デパートやトラム(路面電車)も閑散としています。自炊するため買い物に行っているスーパーマーケットでは、ちょっと前にトイレットペーパーが不足していたけど、現在は大丈夫です。

 チームが活動休止中の今は、1人で自主トレをする毎日です。外出は禁止されていないので、ランニングをしたり、筋トレをしたり、広い場所に行ってボールを蹴ったり。ただ、さっきも話したように政府から10人以上で集まるのは禁止されていて、最近、こんなことがありました。

 スタジアムの横にグラウンドがあるんですが、チームメート1人を含めた20人程度で紅白戦のようなゲームをやっていたみたいなんです。それが誰かに通報され、メディアにはプレーしているところを撮影され…。結構な問題になって、最終的にそのグラウンドは封鎖されました。

 個人としてはメトロやバス、トラムに乗ることを自粛していて、移動は歩きか自転車を使うようにしています。チームの活動が休止となってから、1カ月以上が経過しました。難しい状況ではあるけど、サッカー選手としては良い状態を保っておくことが大事です。スタジアムでプレーできる時を思い描きながら、日々を過ごしていきたいです。 (HJKヘルシンキMF)

 《ステイホームで水墨画》 チームが活動休止となり、自宅に居る時間が増えている中、田中は水墨画の新たな作品を完成させた。15~17年のHJKヘルシンキ在籍時に日本人の画家に手ほどきを受けて趣味として始め、18年には新潟、昨年は大阪で個展を開いたほどの腕前の持ち主。最近、完成させた愛犬bark(バーク)を描いた作品を本紙で公開してくれた。

 ◆田中 亜土夢(たなか・あとむ)1987年(昭62)10月4日生まれ、新潟県出身の32歳。前橋育英高から06年に新潟入団。9年間を過ごし、15年2月にフィンランド1部HJKヘルシンキに完全移籍。18年にC大阪に完全移籍で加入し、今年3月にHJKヘルシンキに復帰。1メートル67、68キロ。利き足は右。


 ▽フィンランドと欧州の現状 国連が発表する「幸福度ランキング」で、今年を含め3年連続で世界一となったフィンランド。国内の新型コロナウイルスの感染者数は3161人で、死者は64人(15日午後現在、米ジョンズ・ホプキンズ大調べ)。非常事態宣言が発令され、陸路の国境は封鎖。空路でも入国できるのはフィンランド人や在住者に限られている。欧州で感染が拡大しており、医療崩壊が起きているイタリアは死者数が2万人を超えた。

 ▽フィンランドリーグ 1908年創設。4月に開幕し10月まで行われる春秋制。1部は12チームで、レギュラーシーズンはホーム&アウェーの22試合。プレーオフを上位6チームと下位6チームに分かれて行い、最終順位が確定。優勝チームは欧州CL予選1回戦への出場権を獲得。12位が2部へ自動降格、11位が2部2位と入れ替えプレーオフ。最多優勝はHJKの29回。

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