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将棋界屈指のサッカーフリーク渡辺明王将 欧州CLを語る(下)

[ 2019年6月1日 11:16 ]

欧州CLの決勝に挑むリバプールとトットナムのエンブレムの付いたぬいぐるみを掲げる渡辺王将 
Photo By スポニチ

 将棋界屈指のサッカー好きとして知られる渡辺明王将(35)=棋王との2冠=が6月1日(日本時間2日午前4時~)に行われる欧州チャンピオンズリーグ(CL)決勝戦に向けて、今季の振り返りや見どころを語った。全2回の最終回。

 愛息とのサッカー観戦を続けるうちにすっかり海外サッカーの迫力にのめり込んだ渡辺にとって、過去最高の欧州CL決勝とは――?

 「印象に残っているのは2013―14シーズン。欧州CLをちゃんと見るようになったのがこのシーズンからだったというのもあって、レアル・マドリードとアトレティコ(A)・マドリードの“マドリード・ダービー”を挙げます。アディショナルタイムで、もうあとちょっとでアトレティコの優勝というところで、レアルのセルヒオ・ラモスのゴールで1―1に追いついたのがすごく印象的でしたね。結局延長戦で4―1となってレアルの勝ち。アトレティコはそのあとも優勝できていないんですよね」

 最も好きな選手だというC・ロナウドが得点王になったのもあり、この一戦を選んだという。「CLといえばロナウド」だと言い、「近年レアルが優勝した年はロナウドが毎年得点王になっているので印象が強いです。身体能力の高さ、空中で止まっているようなヘディングシュートは見ていてすごいなと思います」と絶賛した。

 自身が“監督”であり“プレーヤー”でもある棋士。A・マドリードの指揮官ディエゴ・シメオネの哲学に共感することもあるという。

 「シメオネ監督に興味を持ったのは、レアルとかバルサとか、ヨーロッパのビッククラブと比べるとアトレティコは資金力が低いんですよ。その中でなぜ成果が出せたのか。シメオネの哲学を知りたいなと思ったことがきっかけです。例えば、審判のミスについては、自分の力ではどうにもならない事象。それに対していつまでもぐちぐちいうのは今後成し遂げられるはずのものを失うだけで無駄だ、ということが書いてありました。あとは選手のモチベーションを高めたり、選手をどうコントロールするかという話題の時に、聞こえの良いフレーズは無意味だ、ということが書いてあって、おもしろいなと思いました。聞こえの良いフレーズというのは、自分でもインタビューでよく答えそうなことだと思うんですけど、本当に人の心には響かない。ありきたりな事を言っても意味がない、というのは確かにそうだなと思いました。僕もどちらかというとそっちのタイプなので、そうだな、と共感できる部分が多かったですね」

 渡辺の歯に衣着せぬトークや解説の人気の秘訣はここに隠されているのかもしれない。

 渡辺は6月4日に開幕する棋聖戦5番勝負で、初の名人位を獲得したばかりで現在絶好調の豊島将之3冠(29)に挑戦する。開幕を目前に控えるが「あまり実感が沸かない」と笑う。自身にとって3度目の棋聖挑戦だが、獲得には至っていない。「過去に獲得できたのは竜王、王将、棋王、王座と9月~翌年3月のタイトルです。初めて獲ったタイトルが竜王戦で、しばらく竜王戦を中心に1年を過ごしていたので、どうしても冬に照準が合うんですよね。今年でいうと、1月からは王将戦、2月からは棋王戦もありました。3月までタイトル戦を2つ平行してやっていると結構ピリピリするんです。やっと終わったと思って気持ちをバタンと落とすんですけど、またそれを上げるのはすごく大変」と現在の心境を吐露した。

 秋~冬季に行われるタイトル戦で活躍していることから“冬将軍”との異名も。「今までは4~6月はオフのようなサイクルでしたので、6月からのタイトル戦で冬場と同じような状態にまた持っていけるか、ちょっと不安がありますね。技術的なところよりは気持ち的な部分で、一度緩めたものをまた(ピークに)持っていくのは大変なんです。だから羽生(善治)さんみたいに一年を通してタイトル戦にずっと出ているのは大変なことです。ずっと張りつめてなきゃいけないので。それが続くかな、というのが勝負のカギになるかもしれないですね」と自己分析した。

 複数冠保持者同士の対決とあり、ファン垂涎の好カードだ。「豊島さんのここ最近の充実度というのがすごいですからね。でももし棋聖が獲れれば、そこ(3冠と2冠)をひっくり返せる。基本的には挑戦者の方が気が楽ですしね。楽しみにしてるとの声をよく聞くので、期待に応える内容の将棋を指したいです。技術的な部分をすごく注目されると思うので、白熱したタイトル戦になればいいなと思います」と意気込んだ。

 タイトル戦の大舞台を目前に控えるだけに、「CL決勝は朝4時かー。どうすればいいんだろう」と頭を抱えた。

 「でも録画だと総時間数の表示で内容がわかっちゃうんですよ。前後半の試合だと、だいたいの総時間130分くらいだと思うんですけど、総時間が180分とかになってると“これ延長あったでしょ!?”みたいに(試合内容が)わかっちゃうんですよ(笑い)。あれ、非表示とかにできないのかな!?うーん、観るかな!4時に起きて!」

 渡辺も大注目の欧州CL決勝は2日午前4時キックオフ。14季ぶり6度目の優勝を狙うリバプールか、初の頂点を目指すトットナムか!?試合の模様はDAZNが完全独占中継を行う。

 ◇渡辺 明(わたなべ・あきら) 1984年(昭59)4月23日、東京都葛飾区生まれの35歳。所司和晴七段門下。00年3月に四段昇段を決め、史上4人目の中学生棋士に。04年、初タイトルとなる竜王を獲得。以降9連覇。獲得タイトルは竜王11、王座1、棋王7、王将3の通算22期(歴代5位)。永世竜王、永世棋王資格保持者。家族は妻、長男。趣味はフットサル、プロ野球観戦、競馬、寺社の御朱印集め。

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2019年6月1日のニュース