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年間予算5000万円のチームからなでしこへ 千葉園子は“2部の宝”

[ 2016年9月21日 13:00 ]

千葉園子

 洋服店に入り、好みのトレーナーを物色していると、いきなり携帯電話が鳴り出した。発信者は、所属するASハリマアルビオンの田淵監督。「なでしこジャパンに選ばれたぞ」。ほぼ代表歴がなかった彼女に、その言葉をすぐに飲み込ことはできなかった。「夢でしょ?」。なでしこリーグ2部で戦うMF千葉園子(23)が代表入りを告げられた瞬間だった。

 リオ五輪への出場を逃し、高倉監督の初陣となった6月の米国遠征に、2部から1人だけ招集された。3カ月前にU―23代表に初めて選ばれたばかりで、全国的には無名の存在。「“驚いた”どころじゃないんです。ひと晩寝たら、自分の名前がリストから消えていると思った」。DF熊谷やFW永里(旧姓大儀見)ら、長く代表を支えてきた選手たちと同じ舞台に立つことが、どうしても信じられなかった。

 現在は物流関係の会社で働きながらプレーする。週5日従事し、勤務時間は午前8時30分から午後5時まで。その後、午後6時30分からハリマの練習に参加する。約2時間の全体メニューの後に30分間の自主トレで個の力を高めている。技術を生かした攻撃的なプレーが持ち味のアタッカーで、クラブではFWで出場することも多く、今は「遠目からのシュート」に磨きをかける。米国遠征に続く7月のスウェーデン遠征でも再び代表に招集されたことから、高倉監督の期待の大きさも伝わってくる。

 所属するハリマの年間予算は約5000万円。これはなでしこリーグ2部の平均で見ると約半分程度だという。そのチームから出てきた代表選手を、大学教授と準公務員の職を捨てハリマの代表取締役に就任した岸田直美氏は「2部でも、輝けば誰かが見てくれている。彼女はなでしこリーグ2部の宝です」と口にする。ハリマでの目標は「1部昇格」で、選手としては「“2016年だけの千葉”と言われたくない」と代表定着へ意気込む23歳。姫路から世界を目指す。(西海 康平)

 ◆千葉 園子(ちば・そのこ) 1993年6月15日、大阪市生まれの23歳。日ノ本学園高、姫路日ノ本短大を経て13年にASハリマアルビオンに入団。2部リーグでの1年目だった昨季は27試合出場13得点。今年3月にU―23日本代表に選ばれ、同5月になでしこジャパンに選出された。1メートル62、48キロ。利き足は右。背番号10。

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2016年9月21日のニュース