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なでしこ8強!新シンデレラだ有吉V弾「ビックリしてパニック」

[ 2015年6月25日 05:30 ]

<日本・オランダ>前半10分、有吉(右)は先制ゴールを決め、大儀見に抱きかかえられる(AP)

 日替わりヒロインで、8強進出だ。W杯カナダ大会で連覇に挑むなでしこジャパンは23日(日本時間24日)、オランダとの決勝トーナメント1回戦に2―1で勝利を飾った。前半10分に先発に抜てきされたDF有吉佐織(27=日テレ)がこぼれ球を豪快に決め、代表初ゴールとなる先制点を挙げた。先手必勝のトーナメントで期待に応える活躍。準々決勝に駒を進めたなでしこは27日(同28日)にエドモントンでオーストラリアと対戦する。

【試合結果 女子W杯決勝T なでしこジャパンメンバー】

 まばゆいスポットライトを浴びたのは背番号19だった。前半10分、左クロスに大儀見がヘディングを見舞う。バーに嫌われたボールをDFがクリアミス。こぼれ球を振り抜いたのは有吉だ。「視界が開けた。(コースが)パッと見えた」。右足から放たれたスピンの利いたボールはピッチをはい、ゴール左を射抜く。オランダの出ばなをくじく先制弾は代表初ゴール。記憶が吹き飛ぶほど喜びを爆発させた。「ビックリしてパニックだった。喜び方がダサかったかな」と余韻を楽しんだ。

 “ガラスの靴”を渡されたのは試合前。ミーティングで先発を告げられた。「相手の左サイドの選手が意外と中に寄っていてコースが空いていた。そこを使いたかった」と佐々木監督。右サイドバックだが、攻撃のキーマンとして送り出された。先発11人中、ドイツ大会の優勝未経験は有吉だけ。「(得点は)全然考えていなかった」。守備で頭がいっぱいだった。だが、こぼれてきたボールに体が反応。自身初得点だけでなく、なでしこジャパンのDFとしてもW杯初ゴールとなった。

 運動量豊富なサイドバックの素顔は、プレースタイルとは裏腹に自然体そのものだ。日本女子サッカー界もプロが増えているが、有吉は報酬のない完全なアマチュア。日体大卒業後の10年から横浜のフットサル場「クーバー・フットボールパーク横浜ジョイナス」で働きながらプレーに磨きを掛けてきた。平日の午前10時~午後3時の間、受け付け業務を行うが、「普通の女の子という感じで、オーラはない」(島田実支配人、37)。客とも気さくに話し「なでしこの選手だったの?」と驚かれることもしばしばという。職場の同僚の佐藤真央さん(24)らからは「日本食が恋しくなるだろうから」と、7回勝てば優勝という意味を込められ、ふりかけを7袋もらった。「いろいろな人に感謝したい」は心から出た言葉だった。

 地道な努力を続けるきっかけが、神村学園中3年時代の出来事だった。鹿児島県内で開催されたU―18選抜の全国大会。補助員だった有吉の目の前を、大儀見や川澄、近賀が躍動していた。「“ヤバイ、強い、うまっ”って感じで衝撃だった」。無名の少女は目を覚ました。同じポジションを争うことになる近賀とは、その時に2ショット写真を撮ってもらった。「今でも信じられないけど、一緒に戦っている」。憧れの先輩たちと挑む初の舞台。その近賀を押しのけて先発し持ち味の攻撃力を存分に発揮した。

 12年ロンドン五輪はバックアップメンバーだった遅咲きの27歳。「守備は修正すべきところがある。一つ一つ経験にして引き出しにしたい」。あと3勝。アマチュア選手のシンデレラストーリーはW杯連覇で完結する。

 ◆有吉 佐織(ありよし・さおり)1987年(昭62)11月1日生まれ、佐賀県出身の27歳。鹿児島・神村学園高、日体大と進み08年に強化指定選手として東京電力でプレー。10年日テレ入り。12年2月のアルガルベ杯ノルウェー戦でA代表デビュー。同年のロンドン五輪バックアップメンバー。なでしこジャパン通算38試合1得点。1メートル59、51キロ。利き足は右。

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