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パラリンピアン佐藤“MVP級”東北魂スピーチ

[ 2013年9月9日 06:00 ]

2020年五輪の開催都市が東京に決まり、招致関係者と抱き合って喜ぶパラリンピック陸上の佐藤

2020年「東京」パラリンピック

 20年の東京にはパラリンピックもやってくる。最終プレゼンでもパラリンピアンの佐藤真海が、高円宮妃久子さまの後を受け、実質的なトップバッターとしてMVP級の活躍を見せた。

 「自分にできるか不安だったけど、みんなの思いを言葉に乗せていこうと腹をくくった」。プレゼン担当者からは「最初にテーマを打ち出して会場の空気を変えたい」と最初に起用する意図を説明されたという。宮城県気仙沼市出身の31歳。19歳の時に骨肉腫で右足を失い、絶望から立ち直るのにスポーツが支えになった。そして故郷を襲った東日本大震災。自らの経験を情感たっぷりに訴えかけた。

 前夜も自室で練習をしているうちに「昔のことを思い出して」涙が止まらなくなったという。「おかげですっきりと臨めた」。この日朝には気仙沼中時代の恩師が「彼女ならきっとやってくれる」と話しているのをテレビで見た。故郷からエールを送られた思いで堂々と壇上に立ち、IOC委員からも「いい仕事をしたな」と声をかけられたという。

 日本の障害者スポーツ文化にも一層の充実を願っている。そのための制度面の準備として、政府は先月23日に厚労省と文科省で分かれていたパラリンピック強化事業の所管を来年度から文科省に一本化することを決めた。これまで厚労省管轄にあったのは障害者スポーツが医療や福祉、つまりリハビリの一環と考えられていたからだ。東京開催が決まったことで選手強化も資金面、施設面でもバックアップされるはず。「パラリンピックの環境をもっとよくしていきたい。復興もwantではなくhave toで動いていく。それが心強い」。東京での開催決定は障害を抱えるアスリートにとっても大きな夢の一歩だ。

 ◆佐藤 真海(さとう・まみ)1982年(昭57)3月12日、宮城県気仙沼市生まれの31歳。中学で陸上を始め早大でチアリーダーとして活動していた01年に骨肉腫を発症。02年4月に右足の膝下以下を切断して義足生活に。翌年からスポーツを再開し走り幅跳びでパラリンピックの04年アテネ大会に出場して9位。08年北京大会は6位、3大会連続出場となった昨年のロンドン大会は9位。サントリーホールディングス所属。

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2013年9月9日のニュース