【ヴィクトリアM】アンドヴァラナウト95点 しなやかな体つきに力の“勲章”バンデージ

[ 2022年5月10日 05:30 ]

鈴木康弘「達眼」馬体診断

アンドヴァラナウト
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 混戦に断を下す3強ボディーだ。鈴木康弘元調教師(78)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第17回ヴィクトリアマイル(15日、東京)ではソダシ、ソングライン、アンドヴァラナウトをトップ採点した。中でも達眼が捉えたのはアンドヴァラナウトの右後肢に巻かれたバンデージ。パワーアップした競走馬の“勲章”が隠されていた!?

 馬は馬具によって判ぜられずといいます。外見からだけでは正確な評価はできないとの意味。否定こそしませんが、馬の特徴は馬具によってある程度、把握できるものです。

 たとえば、リングビット(ハミ)を使う馬は総じて口向きが悪い。モタれる馬も多い。メンコを着けるのはうるさい馬。逆にモグシ(簡易頭絡)だけで立ち馬撮影に臨むのはおとなしい馬だからです。マルタンガール(引き返し)を着けるのは頭を上げる馬。リップチェーンを装着するのは激しくイレ込んだり、暴れたりする馬。チェーン(鎖)で歯ぐきを締めつけて強制力を働かせるような荒っぽい馬具は避けてほしいが、馬体診断でも時々、目にします。

 北欧神話に登場する富をもたらす魔法の指輪「アンドヴァラナウト」にあやかった黒鹿毛馬が新たに着用したのは…。指輪ではありません。右トモ(後肢)の球節に巻かれたバンデージ。昨年の秋華賞(3着)時には着けていなかった、クモズレ(後肢の球節下にできる擦過傷)を保護するための馬具です。トモに力がつくと、踏み込みが強くなるため球節が地面に接触してしまう。その球節の下に擦過傷ができるのです。

 擦り傷は成長する子供の勲章といいます。クモズレも成長する馬の勲章…とまでは言いませんが、パワーアップしたのは間違いない。立ち馬写真で確認できる左トモには秋華賞時以上に張りがあります。写真に映っていない右トモの張りはもっと増していると想像できます。

 東京競馬場のような左回りコースでは通常、左手前(左前肢と右トモを軸脚)で3、4角を回ります。直線入り口で右手前(右前肢と左トモを軸脚)に転換。その後、再び左手前(左前肢と右トモを軸脚)に戻ります。右トモの強化は3、4角の加速とゴール前の踏ん張りを可能にするでしょう。

 筋肉マッチョな父キングカメハメハよりも母の父ディープインパクトの特徴が表れた馬体。しなやかでスラリとした体つきです。秋華賞時には「腹周りが少し細い」と注文を付けました。それから半年余り。昭和の名馬カブトシローのように“新聞の読める馬”なのか、注文通りに腹をフックラさせています。

 毛ヅヤも抜群。黒鹿毛の被毛が黒光りしていますが、何よりも目を引くのが右トモ球節に巻かれたバンデージ。馬は馬具によってパワーアップしたと判ずることもできます。(NHK解説者)

 ◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の78歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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