【七夕賞】トーラスジェミニ重賞初V、小桧山師は10年ぶり歓喜&JRA通算200勝

[ 2021年7月12日 05:30 ]

<福島11R七夕賞>ロザムール(奥)との競り合いを制した(4)トーラスジェミニ(撮影・村上 大輔)
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 サマー2000シリーズの第1戦「第57回七夕賞」が11日、福島競馬場で行われ、2番人気の戸崎圭太(41)騎乗トーラスジェミニが直線抜け出し、13回目の重賞挑戦で初制覇。送り出した小桧山悟調教師(67)は10年ぶり5回目の重賞制覇でJRA通算200勝を飾った。

 福島の上空に垂れ込める鉛色の雲を小桧山師が万感の思いで見上げている。レース直前に芝に降り注いだ天恵の慈雨。七夕の星の代わりに梅雨空が重賞制覇の願いをかなえてくれた。「スマイルジャックの東京新聞杯以来10年ぶりか…。時計がかかる重たい馬場になったのも良かった」。1着の脱鞍所から引き揚げてきた戸崎と祝福の握手を交わした同師。「戸崎が七夕賞なら乗れるっていうから先週の巴賞(函館)をやめて福島に来た。その代わり責任取れよって戸崎に言っておいたんだ(笑い)」。照れ隠しするように軽口で周囲を笑わせた。

 おうし座(トーラス)とふたご座(ジェミニ)。星座にちなんで命名された鹿毛が名手の手綱にぴたりと折り合っている。やや重馬場にもノメらず、逃げるロザムールの2番手を追走した。4角でもただ1頭、馬なりの手応え。しぶとく粘るロザムールを首差ねじ伏せてのゴール。「厩舎にいい状態に仕上げてもらったのが大きい。安田記念(5着)から距離が延びるのが不安材料だったが、対応してくれた」。テレビインタビューに応える戸崎の傍らでは小桧山師が前走比6キロ減の馬体に頼もしげな視線を向けている。「1週前にはスタッフたちが少し体が重いと言っていたが、直前に馬が自分で体をつくった。装鞍所ではいつになくやる気になっていた。ゴール前では何かに外から差されると思っていたが、頑張ってくれた。この勝利で名実ともにオープン馬になれた」。2歳時にはスズメのさえずりにも飛びのくほどの怖がりだったが、キャリアを重ねて“ノミの心臓”を解消。通算29戦目、重賞13回目の出走でついにタイトルをつかんだ。

 小桧山厩舎にとって10年ぶりの重賞制覇はJRA通算200勝のメモリアルV。地方交流レースに管理馬を送り続けたため中央競馬には専念できなかったが、開業25年で大台に到達した。「なかなか重賞を勝てず、競馬の厳しさは身に染みている。でも、調教師をやめなくて良かった。定年前にこんなに素晴らしい馬に出合えるなんて思ってもみなかった」。2年半後に70歳定年を迎える同師は続けた。トーラスジェミニに重賞タイトルを…。胸の内の短冊に込めた願いをかなえてくれた福島の空を小桧山師はもう1度見上げた。

 ◆トーラスジェミニ 父キングズベスト 母エリモエトワール(母の父マンハッタンカフェ)16年4月30日生まれ 牡5歳 美浦・小桧山厩舎所属 馬主・柴原榮氏 生産者・北海道新冠町の川上牧場 戦績29戦8勝(重賞初勝利) 総獲得賞金1億9751万8000円。馬名の由来はおうし座とふたご座。

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