さらば、蛯名…34年“東の顔”として歴代4位2541勝 ラストデー2勝で新たなスタートに花

[ 2021年3月1日 05:30 ]

<中山記念>ゴーフォザサミットで現役最後の騎乗を終えた蛯名(撮影・西川祐介)
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 熱く、見る者の記憶に残る蛯名の騎手人生が幕を閉じた。28日の中山競馬で7鞍に騎乗した蛯名正義(51)が、34年間の騎手生活にピリオド。5、10Rで2勝を挙げ、騎手ラストデー、そして調教師としての新たなスタートに花を添えた。また、東西8人の調教師もこの日で引退。松田国英師(70)、星野忍師(70)が有終Vを飾った。

 やりきった。引退式では涙ぐむシーンもあったが、胴上げで5回宙に舞った蛯名は実に晴れやかな表情を浮かべていた。「本当にいい仕事だよ。大変だけど、素晴らしい仕事でした」。周りでは苦楽を共にした騎手仲間たちがにこやかに笑っている。「自分は小さい頃から騎手になりたかった。好きなことをやらせていただけた。(生まれ変わっても)また、やりたいです」

 この日は歴代4位のJRA勝利数に2勝を加える大活躍。5Rを4番人気シルバースピリットで差し切ると、10Rは中団でなだめた単勝28・9倍のスマートアルタイルで通算2541勝目をマーク。最終騎乗の中山記念も6番人気ゴーフォザサミットで4着に食らい付いた。「流れも予想通りで思った通りの競馬ができた。これで負けたら仕方がない」と納得の騎乗。本人は「最後だからいい馬をたくさん用意していただいて」と謙遜したが、後輩騎手たちの前でその腕っ節を見せつけた。

 エルコンドルパサーの98年ジャパンC、マンハッタンカフェの01年菊花賞、有馬記念、02年天皇賞・春など国内ビッグタイトルを獲得。10年にはアパパネで牝馬3冠を達成した。数々の名馬とともに第一線を走り続けた“東の顔”。だが、ダービーと凱旋門賞ではそれぞれ2回の2着に泣き、あと一歩のところで苦汁もなめた。責任感の強い男が、引退の日に思い出のレースとして挙げたのは1番人気で敗れた一戦。「覚えているのは単勝1・2倍で負けたマンハッタンカフェの日経賞(02年6着)。抜け殻になったのを覚えている」と頭をかいた。

 1日から技術調教師として修業の日々が始まる。来年3月の開業を目指し、藤沢和厩舎などで馬づくり、厩舎経営を学ぶ。「ファンの皆さまに愛される馬を育て、騎手として届かなかったレースにも挑戦したい。豊(武)とのコンビも楽しみにしてもらっていると思うのでね」。タイムオーバーで敗れた中山のデビュー戦から34年。騎手人生を全力で駆け抜けた男が新たな門出に立った。

 ▼武豊 エビちゃんとは競馬学校生の時から今に至るまで同じ時間を過ごしてきたからね。ライバルという感覚よりも特別な存在。寂しくなるね。今後は一緒に勝っていく関係性も楽しみですね。

 ◆蛯名 正義(えびな・まさよし)1969年(昭44)3月19日生まれ、北海道出身の51歳。87年3月1日中山5Rアイガーターフで初騎乗(14着)。同年4月12日中山4Rダイナパッションで初勝利。通算2万1483戦2598勝(うちJRA2万1183戦2541勝、重賞129勝)。1メートル62、50キロ。血液型A。

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