田所師、思い出つないだニホンピロバロンのG1制覇 ジョッキーから調教師へ足かけ50年のホースマン人生

[ 2021年2月19日 05:30 ]

名伯楽 最後の勝負

定年を迎える田所秀孝調教師(撮影・亀井 直樹)
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 足かけ50年に及ぶホースマン人生にゴールが見えてきた。田所師はジョッキーから調教師に転身。毎週、競馬と向き合った。

 「振り返ればアッという間だけれども、やってきた年月は長いものがあるかな。こういう仕事柄ね、終着点がないので。常に毎日、毎時間が次に向かってのステップアップの時間。悔いはないけどまだ“やり切った”とはあまり感じてはないかな」

 調教師として、98年のアーリントンCで重賞初勝利を飾った。6番人気でのV。ペリエ・マジックと謳(うた)われた。その当時を「セリでアメリカに行っていたんですよ。向こうでシャンパンを開けました」と懐かしそうに振り返る。エリモハリアーが函館記念を05年から3連覇。これも語り草となるだろう。「函館で誘導馬になりましたし、引退した後も良かったと思います」。そして、G1馬との巡り合いを果たす。

 ニホンピロバロンはデビュー38走目で障害へ転向した。初戦で勝利を挙げると、3走目から障害重賞2勝を含む5連勝。そして18年の中山大障害でJ・G1V。田所師は平地・障害を通してうれしいG1初勝利となった。鞍上の石神にまつわるエピソードがあった。

 「彼のオヤジは元ジョッキー。私が昔、東京にいたころ中村広先生の所にいて兄弟弟子の関係でした。厩舎で一緒に仕事をしていましたね。そんな彼の息子だったし、オヤジも喜んでくれた。いい思い出です」

 昨年は京都競馬の改修工事前ラストとなる、11月1日の京都12Rをコパノマーキュリーで制した。「ボクは京都で生まれ育ったし、節目に勝たせてもらったのは良かった。行ける状況が戻ってくれば、競馬場に行って応援したい」。競馬との付き合いは続いていく。

 十数年前から、ボランティアに参加している。「平日はその活動を引き続きやっていければ」と言う。話がひと息つき、手にした缶コーヒーをグイッと飲み干した。「また聞きたいことがあったら、遠慮せずに来てください」。優しき心根を持つトレーナーは、温和な笑みを浮かべた。

 ◆田所 秀孝(たどころ・ひでたか)1950年(昭25)10月31日生まれ、京都府出身の70歳。71年に騎手デビューし、JRA通算4152戦292勝。78年阪神4歳牝馬特別(サンエムジョオー)で重賞初勝利。重賞通算3勝。96年に厩舎を開業。98年アーリントンC(ダブリンライオン)で重賞初制覇を飾る。JRA通算6392戦367勝、うち重賞11勝。

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