【フェブラリーS】角居師 ワイドファラオでラストG1飾る!21年追い求め続けた“世界基準”

[ 2021年2月16日 05:30 ]

<フェブラリーS>ワイドファラオと最後のG1に臨む角居師(撮影・亀井 直樹)
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 この20年、傑出した成績を残してきた角居勝彦調教師(56)が今週、来週の競馬をもって勇退する。牝馬ウオッカによるダービー制覇、ヴィクトワールピサでのドバイワールドC制覇など常に新時代を切り開いてきた名トレーナーは、フェブラリーSのワイドファラオが最後のG1出走。これまでと、これから。じっくり語ってもらった。

 ――いよいよ調教師生活も残り2週。振り返って。

 「昔のことを考えると(馬に)申し訳ないと思うことはたくさんあります。牧場や馬主さんに支えていただき、おおむねいい感じで進んだと思います。身に余る光栄です」

 ――厩舎にとってのターニングポイントは?

 「デルタブルースが菊花賞(04年)を勝ったあたりから、スタッフが“うちはG1を勝てる厩舎なんだ”という気持ちになってきましたね。そこからハットトリック、シーザリオ、カネヒキリと一斉に走りだしてくれました。最初はスタッフに“G1を獲りたい、世界に行きたい”と言ったら笑われてましたけど、自分たちの壁を破るきっかけになったと思います」

 ――ウオッカのダービー制覇(07年)が印象的。

 「牝馬でダービーかという気はしましたが、オーナーブリーダーの一番の夢だと思いましたし、チャレンジさせてもらえたのはありがたかったです。自分はダービー初挑戦で面白がっていましたが、レース後に“種馬選定のレースなんだぞ”と言われて、無邪気に使っちゃいけないレースなんだと気付きました」

 ――開業当初から海外を意識?

 「開業時は“俺にいい馬を任せてくれたら、ちゃんとつくってやる”という厩務員だらけ。スタッフの中で自分が一番若かったので“やばい、俺の言うことを聞いてくれない”と思って“うちの厩舎は世界を目指したいので世界基準で仕事を”と言ったんです。森(秀行)先生や藤沢(和雄)先生が海外で勝つと興奮しましたし、そういうことを目指せる調教師になりたいと思っていました」

 ――日本馬が凱旋門賞を勝つためには。

 「毎年挑戦することだと思います。最初は向こうの調教場の使いこなし方が分からないからです。同じチームで毎年行くことが大事。現地で日本人が2人開業しているので、間借りしながら調教や競馬のパターンを覚えるのもいいでしょうし、日本人のオーナーに現地に馬を預けていただいて、定期的に馬づくりを試しに行ければ調教師の理解も早くなると思います」

 ――近年、牧場と調教師の関係に変化が見られる。

 「配合、生産、育成した人が一番思いは強いし、大事なプロセスを握っていた人の意見が一番強くなるのは間違いではないと思います。調教師は最後の手柄だけを取っている世界で、どっちが強いとか弱いじゃなくチーム。一緒に夢を共有できないと、1頭ぐらいは強い馬をつくれても継続してつくれないと思います」

 ――スタッフから吉岡師、辻野師が調教師に。

 「“馬づくりは人づくり”という格言があります。考えて行動する人じゃないと育たないと思うので、彼らは角居厩舎で自分なりに勉強してくれたのでしょう。内情を知っているからこそ角居厩舎を超えられるという思いが芽生えて2人は受かったんだろうし、超えてくれればうれしいです」

 ――フェブラリーSにワイドファラオで参戦。砂G1はカネヒキリとサンビスタで現役2位タイの4勝(トップは安田隆師の5勝)。

 「オーナーから“最後にG1へ”と言ってもらえたのはありがたいです。重賞を勝っているように東京マイルは合うし、レースはリズム良く運べるかどうか。展開一つだと思います」

 ――宗教(家業の天理教を継承)の道に進むが、今後について。

 「競馬から離れる馬の余生や、まだ働ける馬の働き口を見つけるお手伝いができればと思っています。人を助けるのも馬を助けるのも同じこと。馬を助けることで人を助ける方法もイメージできつつあります。馬を使った地方創生、ホースセラピーもやりたいですね」

 ◆角居 勝彦(すみい・かつひこ)1964年(昭39)3月28日生まれ、石川県出身の56歳。北海道のグランド牧場から競馬学校を経てトレセンへ。中尾謙太郎厩舎と松田国英厩舎で調教助手を務めた後、01年に開業。04年菊花賞のデルタブルースでG1初制覇。06年メルボルンCをデルタブルース、07年ダービーをウオッカ、11年ドバイワールドCをヴィクトワールピサで勝つなど国内外のG1を数多く制している。家業の天理教の仕事を継ぐため勇退。引退した競走馬の支援活動や障害者乗馬の普及にも尽力。JRA通算761勝(うちG1・26勝を含めて重賞82勝)。

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