【皐月賞】コントレイル95点!最強の器“龍”キ甲と首差し抜け幼さ解消

[ 2020年4月14日 05:30 ]

鈴木康弘「達眼」馬体診断

<皐月賞>飛車の成り駒「龍」へと進化を遂げたコントレイル
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 無敗の飛車が最強の駒「龍」になった。鈴木康弘元調教師(75)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。桜花賞に続き無観客で開催予定の「第80回皐月賞」(4月19日、中山)では3戦無敗で昨年のホープフルSを制したコントレイルを1位指名した。達眼が捉えたのは生駒から成り駒への進化と最強駒のスケール。皐月賞の有力馬を将棋の駒になぞらえて解説する。 皐月賞

 不要不急の外出自粛が求められる皐月賞ウイーク。感染リスクは縦1尺2寸(約36センチ)の小さな将棋盤を挟んだ対局にも伴う。緊急事態宣言を受けて都心の将棋クラブや将棋教室も相次いで休業に入りました。やむなく愛好家は自宅で将棋ソフトと対局していますが、木地駒の手触りがないので将棋を指した気になれないと嘆きます。

 将棋駒の生産量で全国の9割を占める山形県天童市。その高級駒の手触りなら私も覚えています。44年前に厩舎の初勝利祝いとして山形に住む岳父から贈られた彫り埋め駒。彫り上げた駒の溝に漆を木地の高さまで埋め込んだもので、手に吸い付くような感触が特徴です。中でも、印象深いのが飛車の成り駒「龍」。文字の最終画(文字の右下部分)が大きく跳ね上がるように彫り込まれています。昇竜の勢いとスケールを体感できる手触り。馬になぞらえればコントレイル。私の目に触れたのは龍のような飛躍的な成長と器の大きさです。

 460キロ前後の体重以上に大きく見せる、父ディープインパクト譲りのしなやかな馬体。昨年のホープフルS時にも指摘しましたが、柔軟な筋肉が前後肢にバランス良く発達し、均整の取れた造形をつくっています。非凡さがひと目で分かる体つき。しかも、体が固まっておらず、全体のつくりに余裕がある。その余裕とは今後の成長を受け入れる余白。伸びしろもたっぷり残しながら、ホープフルS出走馬の中で1頭だけ器の違いを際立たせていた。将棋でいえば2歳暮れの段階で縦横無尽の広い利きを持つ飛車の大駒でした。

 それから3カ月半、2歳時には未発達だったキ甲(首と背の間の膨らみ)と首差しが抜けてきた。立ち姿からは幼さが解消してきました。ホープフルS時には噴水に立つ小便小僧の彫像のように露呈した陰部をしっかり収めています。心身の成長。将棋でいえば、生駒を裏返した成り駒への進化。飛車は斜め前後方にも利く最強駒「龍」に成った。「へぼ将棋、王より飛車を可愛がり」と言いますが、巧腕、矢作調教師が飛車の守りに腐心せず鍛え抜いた成果でしょう。

 成り駒への進化と引き換えに穏やかだった目つきが鋭くなった。レースでは馬群の壁をつくらないと行きたがるかもしれませんが、舞台は流れの速い小回り中山2000メートル。クラシック1冠は当確の馬体です。

 途方もなく大きな器を持った青鹿毛の龍はもっと成長する。進化の続きは1カ月半後、ダービーの馬体診断でも将棋の駒になぞらえながらお伝えしたい。外出自粛が解除され、競馬場にも将棋クラブにもファンが戻ると望みたい5月末。龍の進化形は大歓声を一身に集める王将か。(NHK解説者)

 ◆鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の75歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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2020年4月14日のニュース