【天皇賞・秋】アーモンド100点!ふっくら一変“女戦士の目”

[ 2019年10月22日 05:30 ]

<天皇賞・秋>以前のふっくらした目から鋭い眼光に変わったアーモンドアイ(撮影・西川祐介)
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 目つきを変えた女王か、背丈が伸びた新帝か。盾を手にするのはどっちだ!?鈴木康弘元調教師(75)がG1有力馬の馬体を診断する「達眼」。天皇賞・秋(27日、東京)ではアーモンドアイとサートゥルナーリアに満点を付けた。達眼が捉えたのは女王の目と新帝のキ甲の変化だ。 天皇賞・秋

 ある国の女スパイが誘拐した女王になりすまそうと、最先端の医療技術で全身整形しました。顔の造形はもとより、体のラインも女王そっくり。周囲は女王本人だと信じて疑いもしませんが、女王の妹だけはなりすましに気付きます。「お姉さまの柔和で穏やかな目じゃないわ。あなたは誰なの?」。女スパイの射すくめるような眼光だけは最先端技術でも矯正できなかったのです。

 天皇賞・秋でも人気を背負うターフの女王。その馬体を見た瞬間、別の馬かと思いました。これまでとは全く違う、とがった目をしている。過去の馬体写真と比べれば、違いは一目瞭然です。「アーモンドアイ」とは字面通りアーモンド形の切れ長で中心がふっくらした目。草原のかなたを見つめるように、その愛くるしい瞳をいつも穏やかに遠くへ向けていました。昨年のジャパンC時には絵画史上、最強の美少女と称される「可愛いイレーヌ嬢」(ルノワール作)のような素直さと従順さ、穏やかさをうかがわせる目だと書きました。ところが、4歳秋を迎えたアーモンドアイは今まで見せたこともないきつい目つきに変わっています。射すくめるような鋭い眼光。20世紀初頭の画家ポール・アントニーが描いた「ジャンヌ・ダルク」のようなとがった目です。「いつもの柔和で穏やかな目じゃないわ。あなたは誰?」。女王の妹が投げかけた疑問が脳裏に浮かびました。

 目は心を映す鏡と言いますが、目と連動して耳の立て方も鋭くなっています。女スパイが隠し持つバタフライナイフの切っ先のように。ならばアーモンドアイのとがった瞳や耳はどんな心境を映しているのか。心のいらだちか、あるいは闘志の表れか。立ち姿からは容易に読み取れませんが、体には力みが全くない。いら立っているなら四肢にも余計な力が入るので、目が映し出したのは闘争心かもしれません。イレーヌ嬢みたいな美少女からジャンヌ・ダルクのような女戦士へ。競走馬として新たな境地に目覚めたと解釈したい。「心を打ちひしぐ敗北もあれば、目覚めさせる敗北もある」とは作家サンテグジュペリの名言。目つきを変えさせたのは安田記念の敗北だったのかもしれない。

 ともあれ、目を除けば、頭から蹄の先まで従来通りの姿を保っています。力強い首差し、しなやかな背中のライン、ボリュームに満ちた肩と後肢(トモ)、ふっくらした腹周り、大きな肺や心臓を収容する牡馬のように深い胸…。ロードカナロア産駒らしいマイラー体形とはいえ、サンデーサイレンス(母の父)譲りの弾力性にあふれた筋肉を備えている。だから、距離にも融通が利く。

 成るか成らぬか目元で知れるといいます。牝馬の盾獲りがなるかは、女スパイの射すくめるような目が知らせているのかも…。(NHK解説者)

 ◆鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の75歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。今春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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