大震災で転機 ディアドラ海外挑戦支える橋田宜長調教助手

[ 2019年8月9日 05:30 ]

 【競馬人生劇場・平松さとし】先週、英国で行われたナッソーS(G1)をディアドラ(牝5=橋田)が制したことは、すでに広く知れ渡っているだろう。

 ナッソーSが行われたのはロンドンから約100キロのところにあるグッドウッド競馬場。毎年7月下旬から行われるグロリアスグッドウッドという華やかな開催の中の大レースの一つとして施行される競走で、日本馬が優勝するのはもちろん、出走したことすら、これが初めて。にもかかわらず、終わってみればレースレコードでの快勝劇を演じてみせた。

 レース後、流ちょうな英語でインタビューに答える1人の青年をテレビ画面越しにも見られたのではないだろうか?彼の名は橋田宜長氏。“宜長”と書いて“よしたけ”と読む。名前を聞いてピンときた方もおられるだろう。橋田満師の長男で同厩舎の調教助手だ。

 1988年生まれで現在30歳の彼だが、大学を出る頃には普通に就職活動をした。そんな11年3月11日、あの忌まわしい東日本大震災が起きた。未曽有の災害に日本中がてんやわんやしたが、宜長青年は「ちょっと違うのではないか?」という出来事に出くわす。

 「就職の面接が予定されていた、まさに当日に震災が起きました。さすがに面接どころではないと思ったのですが“予定通り会社に来てください”と言われ驚きました」

 これを機に「家族と一緒に働きたい」と強く願うようになり、馬の社会に入ることを決めた。15年にはフライングスタート(ドバイのシェイク・モハメドが馬の仕事を目指す世界中の若者を支援し、世界の競馬の現場に派遣する活動)の狭き門に合格し、参加。しかし、そのほぼ同じタイミングで父の厩舎で働ける状況になると、迷うことなく後者を選択。帰国した。

 「その父の下で勉強しながらこうして海外のG1を勝てたのは本当にうれしいです」

 ディアドラの世界挑戦はまだ続く。宜長助手の笑顔がどこかで再び見られることを期待したい。(フリーライター)

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2019年8月9日のニュース