【ヴィクトリアM】フロンテア、6歳熟女の開花 国枝師「充実期」

[ 2019年5月8日 05:30 ]

フロンテアクイーン(撮影・西川祐介)
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 令和最初の牝馬G1を射止めるのは遅咲きの女王だ。「第14回ヴィクトリアマイル」(12日、東京)で台風の目となるのが伏兵フロンテアクイーン。シルバーコレクターの汚名を返上し、6歳春の中山牝馬Sで重賞初制覇を遂げたばかり。最強牝馬のサポートも得て一気に頂点へ駆け上がる勢いだ。一方、レッドオルガは一族の悲願を懸けて挑む。

 昭和から平成、令和へと受け継がれるG1の波乱劇。遅咲きのツツジに彩られた美浦トレセンの馬道で国枝師がフロンテアクイーンの明るい鹿毛をまぶしそうに見つめている。「ストロングエイトみたいな馬だよな」。愛馬が視界から消えると、独り言のようにつぶやいた。ストロングエイトとは73年有馬記念をブービー人気で快勝するなど昭和40年代に大波乱を起こした伝説の穴馬。「相手なりに走るからどんなレースでも善戦するけど、なかなか勝ち切れない。有馬記念もノーマークだった。古すぎて誰も知らないか?」

 ストロングエイトが善戦マンなら、フロンテアクイーンは善戦ウーマン。15度目の重賞挑戦で初制覇を飾った中山牝馬Sまで重賞2着5回。通算成績では3勝、2着9回…。「シルバーコレクターと呼んでくれ」と同師も自嘲気味に語ってきた。「前走でようやく勝てたのは精神的な成長が大きい。チャカチャカとうるさかったのが、年齢を重ねて落ち着いてきた。余計なことはしなくなったからね」と続けた同師。「充実期に入った感じ。カイバをしっかり食べて、体も凄く立派になっている」

 6歳春に本格化の気配を見せる遅咲きの牝馬。開花に一役買ったのは同厩舎のアーモンドアイだ。3冠牝馬の調教相手を務めながら自身もレベルアップした。「併せ馬を一緒にやった効果の大きさは分からないが、いつも後ろから一気にかわされて“なんだ、あの馬は!?”と思ったんじゃないかな。レースでは大概の馬を相手にしても大丈夫。ビビらないから」

 同厩舎で育った平成2頭目の3冠牝馬アパパネも調教パートナーを鍛えたという。牧場で昭和の最強馬シンボリルドルフと一緒に調教したシリウスシンボリはダービー馬に成長した。名馬のいる厩舎や牧場に再び大物が生まれる。横綱の胸を借りた稽古で出世力士が出現する相撲部屋と同じだ。昭和から平成、令和へと続く帝王道継承である。フロンテアクイーンと同じ5戦連続2着の善戦ウーマンといえば後にヴィクトリアマイルを連覇したヴィルシーナ。14年には11番人気で逃げ切った。昭和のストロングエイトから平成のヴィルシーナ、令和のフロンテアクイーンへ波乱劇も受け継がれる。

 「それにしても、メイショウサムソン(産駒)は丈夫だよな」。国枝師は再びクイーンの明るい鹿毛をまぶしそうに見つめた。アーモンドアイの調教役を務めながらレースでも使い減りしないタフな6歳牝馬。遅咲きのツツジのように5月半ばが開花の季節だ。

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2019年5月8日のニュース