沖師、人も馬も育てた トップロードと歩んだ渡辺も調教師に

[ 2019年1月30日 05:30 ]

沖芳夫調教師
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 沖師は幼少時から動物好きだった。「この道でなければ上野動物園に入っていたかも。随分と通ったから」。今は自宅で猫を飼い、冬場はミカンを輪切りにして木に刺す。「付けたその日から野鳥が食べに来るんだ」。穏やかな表情を見せた。

 サッカー少年でもあった。東京農大一高に進んだが、そこにサッカー部はなかった。道路を挟んだ向かい側に馬事公苑があった。「将来は(動物と暮らせそうな)北海道に行きたい。馬に触れていたら役に立つかな」。乗馬を始めたことがきっかけ。大学から牧場勤務を経て、28歳で競馬の世界へ入った。

 エリモシックとナリタトップロードでG1を2つ獲った。助手時代にエリモシユーテングという馬に携わった。その娘が97年エリザベス女王杯優勝馬エリモシックだ。「母の分まで何とか…と思っていた。的場均君(騎手)にも“この血統で大きいところを一つ獲りたいんだ”と話をしたことを覚えている」

 翌年、ナリタトップロードが厩舎にやってきた。「夏デビューの話もあったが暮れまで待った。その分、一回り大きくなった。馬の成長に合わせていくことを学んだ」。弟子の渡辺を乗せて制した99年菊花賞は今も語り草だ。その渡辺は調教師に転身し、今年のシンザン記念(ヴァルディゼール)で重賞初Vを飾った。「無事、調教師になって前に進んでいる。成績を見ていくのは楽しみ。ナリタトップロードの母系からはマツリダゴッホ(07年有馬記念など重賞6勝)も出たね」。馬も人も育てた。師の思いは次の世代へと確実に受け継がれていく。

 ◆沖 芳夫(おき・よしお)1949年(昭24)2月28日生まれ、東京都出身の69歳。生まれは渋谷区代官山。東京農大卒業後、牧場勤務を経て大久保石松厩舎調教助手に。86年調教師免許取得。87年10月10日、京都競馬のダイオーハード(15着)で初出走。同年10月25日、福島競馬の同馬(延べ3頭目)で初勝利。JRA通算5911戦478勝。同重賞13勝。

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