マティリアルの悲劇から29年…無事が一番

[ 2018年9月7日 05:30 ]

89年の第34回オータムHで、2年半ぶりに復活勝利したマティリアル。この直後に骨折した。
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 【競馬人生劇場・平松さとし】皆さんはマティリアルという馬を覚えておられるだろうか?

 ひと昔前のアイドルホースだが、同馬が活躍していた時代からかれこれもう20年前後。最近のファンの中には知らない方も多いようなので改めて同馬のエピソードを記そう。

 3戦2勝で1987年のスプリングSに出走した同馬は、最後方から直線一気の追い込みを決めて優勝。レース後、騎乗した岡部幸雄騎手が4年前の3冠馬の名を挙げて「ミスターシービーしちゃった」と語ったのもファンに強烈な印象を与え、続く皐月賞、日本ダービーではいずれも1番人気に支持された。

 しかし、1冠目で3着に敗れると3歳最高峰の舞台では18着(24頭立て)と大敗。これでスランプにハマった同馬は以降14戦、2年半にわたって勝ち星から見放されることとなった。

 復活したのは89年のオータムH。ここで首差勝利すると、冷静で知られた岡部騎手が珍しく小さくガッツポーズをした。

 ところがこの歓喜の直後に悲劇が待っていた。馬を止めようとした岡部騎手の耳に「ボキッ」という音が聞こえた。マティリアルは骨折してしまったのだ。一命を救わんと陣営は手術に踏み切った。手術は成功…したかに思われたが、レースから4日後、骨折に端を発した出血性大腸炎を発症。アイドルホースは天に召された。

 タイミングを考えると鞍上のガッツポーズと骨折は因果関係がないように思えるが、以降、岡部騎手がほとんどガッツポーズをしなくなったのは有名な話である。

 あれから29回目のオータムHが今週末に迫った。当時京王杯だった冠は京成杯に替わり、岡部さんもすでに引退しているが、果たして今年はどんなドラマが待っているだろう。復活劇は歓迎だが、まずは全馬が無事に走り切ってくれることを祈りたい。

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2018年9月7日のニュース