NHK福祉番組「toi-toi」 初回最後の写真撮影に成功の予兆

[ 2025年4月4日 11:00 ]

Eテレ「toi-toi」の初回放送で対話する出演者6人(C)NHK
Photo By 提供写真

 【牧 元一の孤人焦点】NHK・Eテレの新しい福祉番組「toi-toi(トイ・トイ)」(木曜後8・00)が4月3日に始まった。ある人が心の奥底に抱いてきた「問い」をみんなで考えてみようという番組で、初回のテーマは「“見た目”に自信ありますか?」だった。

 私の心を強く捉えたのは、番組の最後に出演者6人が記念写真を撮影する場面だった。

 6人の背景はそれぞれだ。「アルピノ」「ミックスルーツ」「知的障害」「脊髄性筋萎縮症」「脳性まひ」「薬物依存症」。その6人がカメラに向かってとても良い笑顔を見せている。その笑顔は作られたものではない。番組の収録を経て自然に生じたものだ。

 初回のディレクターを務めた加藤寛貴さんはこの番組の成り立ちについて「障害のある方々、マイノリティー性のある方々と一緒に番組を作っていくということを大事にしました。番組を立ち上げる段階から当事者の方々に参加して頂き、どんな番組にするか、どんな方向性にするか、議論しました。そこで出て来たのが『問い』というキーワードでした」と話す。

 制作統括の久保暢之さんは「『問い』に対する『答え』より、できるだけ多様な視点を提示して視聴者が考えるヒントにしたいと思いました。できるだけさまざまなバックグラウンドの方々に番組に集まってもらい、あえて司会者を置かず、方向性をコントロールしないようにして、時に話が脱線しながらも奥深い議論になり、思いがけない発見があるようにしています」と説明する。

 番組前半のVTRで、出演者の一人の河合翔さんは「“見た目”に自信ありますか?」との問いに「自信はないです」と答える。その理由について「写真撮影の時、笑顔を作ろうと思っても顔がゆがむ」と説明する。ところが、その河合さんがスタジオで他の出演者5人との対話を終えた後、写真撮影で柔らかな笑顔を見せるのだ。

 加藤さんは「あの写真は河合さんが最後に笑顔になるだろうかと思って撮影しました。1発撮りであの1枚しか撮っていません。当日は初回の収録で手探りな部分もありましたが、写真撮影に至るまで、2時間くらいかけて丁寧に対話をしていました。共通点だけではなく相違点があってもそれを尊重しながら話し合うことで通じ合う部分がありました。緊張から始まり、相互理解が生まれ、安心に至るという時間の流れがあって、最後は皆さんのあのような笑顔になりました」と振り返る。

 久保さんは「司会者を置いて『こういうことを話してください』と促すと出演者は窮屈になりがちです。『問い』があって『あとは皆さんで好きなように話してください』ということで、皆さんはそれぞれの立場で好きなように話し、いろんな共通項も見えてきて、そこに豊かで気持ちのいい時間が流れます。私たちはここを安全で安心な場所にしたいと思っています」と語る。

 私は、河合さんら6人の最後の笑顔に、新しい福祉番組の成功の予兆を感じた。

 この番組は私のように日ごろ福祉に関心を抱いていない人間が視聴しても興味を抱ける構成になっている。

 例えば初回には「黒髪じゃないと働けない?」という「問い」のコーナーがあった。出演者の一人、藪本舞さんは髪の色によって企業に採用されなかった経験を持ち、VTRで、従業員の髪色を自由にしたスーパーと髪色の歴史が分かる博物館を訪ねた。その結果、黒髪を常識とすることの根拠の希薄さが浮き彫りになった。

 福祉にとどまらず、われわれ人間の思考の源を探る番組に思えた。

 10日放送の第2回の問いは「あなたは“信用”されていますか?」。人は何を理由に他人を信用するのかということを改めて考える機会にしたい。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) スポーツニッポン新聞社編集局文化社会部。テレビやラジオ、音楽、釣りなどを担当。

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