キン肉マン作者「ゆでたまご」が振り返るパリ五輪 「誰かのため、何かのために闘っているのだと」

[ 2024年8月12日 05:30 ]

キン肉マン (C)ゆでたまご
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 2週間に及ぶ熱戦に幕を下ろしたパリ五輪。本紙に人気漫画「キン肉マン」のオリジナルイラストを寄稿し、五輪紙面を盛り上げた「ゆでたまご」の2人が大会を総括し、選手らにねぎらいの言葉を贈った。 (岩田 浩史)

 美しい街並みを存分に生かした演出で世界を魅了した開会式。

 「言葉の意味は分からんが、フランスっぽさを感じました」

 作中の名セリフ(※1)を思わせる“ゆでたまご節”で熱戦に沸いた2週間を振り返る。

 「射撃の無課金おじさん(※2)こそ超人かもしれません。あとセーヌ川の汚染問題は、キン肉マンのフェイスフラッシュ(キン肉マンの素顔から発する光。あらゆるものに生命力を与え、ドブ川を再生させたことも)があれば良かったかもしれないですね(笑い)」

 「キン肉マン」で、人間を超越した体力や特殊能力を持つ「超人」たちのプロレスを描いてきた2人。躍動する選手たちに超人さながらの衝撃を受けたようだ。

 「藤波朱理選手(※3)は凄かった!中学から無敗って漫画でもありえない偉業です!ミハイン・ロペスヌネス選手(※4)の5連覇も驚がくです」

 全国少年少女レスリング大会を支援するなど、作品にゆかりのあるレスリングを中心に、つい格闘技に目がいってしまったという2人。柔道ではフランスの英雄リネール(※5)に敗れ、自分を責めた斉藤立(※6)が印象に残った。

 「柔道の混合団体戦決勝の代表戦が終わった後の斉藤立選手の涙にはぐっときました」

 84年ロサンゼルス大会と88年ソウル大会の五輪連覇を成し遂げた柔道家・仁さんの忘れ形見。父子の物語が28年ロサンゼルス大会で成就することを願う。

 「レスリングや柔道など格闘技系は、銅メダルが2つあって、敗者復活があるのが良いですね」

 32競技329種目で、選手1万1000人余りが世界一を争った今大会。舞台が大きいだけに勝者と敗者のコントラストが際立つが、敗れた者へのまなざしが温かい。見る者の心を動かすのは勝ち負けより、その生きざま。作中でも、全力を尽くした選手に惜しみない拍手を送ってきた。

 「キン肉マンの闘いも誰かのために、何かのために行うものなので、オリンピックの選手も自分のためだけでなく誰かのため、何かのために闘っているのだと思います」

 キン肉マンは、1979年開始のプロレス格闘漫画。各国代表の超人がプロレスで闘う「第20回超人オリンピック編」で人気を不動にした。執筆のきっかけは、80年モスクワ大会のボイコット。開催を心待ちにしていた2人は漫画で実現しようと決意した。あれから40年余り。時代の変化も感じている。

 「最近の選手は、昔のように国を背負う悲壮感はないように見えます。応援する我々の方が国を意識して楽しんでいるのかもしれません」

 観戦は選手以上に力が入ったようだ。作品に生かせそうな競技も見つけた。

 「ブレイキンの動きは、超人の技の参考になるなと思って見ていました」

 パリ五輪から得たインスピレーションや感動は、原稿用紙の上に新たな超人を生むことになりそうだ。

【注釈】
 ※1 作中では「屁(へ)の突っ張り(役に立たない、弱いもの)はいらんですよ」と自信たっぷりのキン肉マンに対して「言葉の意味は分からんがとにかく凄い自信だ」と返すやり取りが人気。
 ※2 射撃の混合エアピストルに耳栓だけの“軽装備”で出場し、銀メダルを獲得したトルコ代表ユスフ・ディケチュにつけられた愛称。
 ※3 レスリング女子53キロ級に初出場で金メダル。圧倒的強さで決勝でもテクニカルスペリオリティー勝ち。
 ※4 レスリング男子グレコローマンスタイル130キロ級のキューバ代表。今大会で個人種目では史上初となる5連覇を達成。
 ※5 柔道男子100キロ超級で金メダルに輝いたフランス代表のレジェンド。混合団体でも優勝に貢献。
 ※6 柔道男子100キロ超級日本代表。混合団体決勝で2―0で迎えた3戦目でリネールに敗れ、3―3で迎えた代表戦で再び敗戦。金メダルを逃した。

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