藤井王将見えた年内8冠!羽生九段を4勝2敗で下し最年少20歳7カ月で王将防衛

[ 2023年3月13日 05:10 ]

第72期ALSOK杯王将戦第6局第2日 ( 2023年3月12日    佐賀県上峰町「大幸園」 )

王将戦初防衛!羽生九段との名勝負を終えた藤井王将は、桜吹雪に歓喜の拳を突き上げる(撮影・吉田 剛、西尾 大助、河野 光希、藤山 由理)
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 藤井聡太王将(20)=竜王、王位、叡王、棋聖含む5冠=に羽生善治九段(52)が挑む将棋の第72期ALSOK杯王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)7番勝負第6局は12日、佐賀県上峰町の「大幸園」で第2日が指し継がれ、88手で後手藤井が勝利した。対戦成績を4勝2敗とし、初防衛に成功。史上最多99期を誇る羽生から、従来の記録を3年以上更新する20歳7カ月での最年少王将防衛を達成した。最年少5冠から1年。全ての防衛に成功し、史上初の全8冠独占を目指す戦いが始まる。

 終局後の一礼は、羽生が頭を上げても前傾を保った。そしてその後の取材。いつもの当意即妙な姿はなく、羽生とのタイトル戦初対決の印象を問われ、慎重に言葉を選んだ。

 「持ち時間8時間で6局指すことができた。羽生先生の強さ、自分の課題を一番感じた」。タイトルを争った渡辺明名人(38)=棋王との2冠=らと比べても最年長の32歳差。常識を疑い、一手ごとの価値を問い直す姿に感銘を受けた。「今までのタイトル戦と比べても充実感があった」。この日も66手目△4五銀上と強く出た瞬間、攻め合われた▲2一角を「本譜のタイミングは気づかなかった。嫌な形にしたと思った」。反撃の起点にしたのは前日の封じ手後、第2日のポイントに挙げた50手目△7四角だった。

 64手目△3六銀、70手目△4五同桂。遠見の角のにらみを生かした進撃を午後から開始する。そして76手目△5六角(第1図)に「角が働く形になって寄せが見えた」。藤井将棋における角桂の重用を「三次元の読み」としたのが師匠の杉本昌隆八段(54)。常人には気づきづらい異次元の攻めが、羽生陣に突き刺さった。

 強者は強者を知るという。5歳から通った将棋教室で羽生による入門書「羽生の頭脳」を熟読した。戦前、「印象深い」として挙げたその対局が08年竜王戦第1局。羽生が渡辺に挑み、先手渡辺の穴熊を右王から攻略した。「堅い陣形の価値が高かった時代。薄くてもバランスを取って“こういう戦い方ができるんだ”と思った」。くしくも今局、羽生が採用した右王を突破した。第1局から先手が勝利し合い、第6局にして初めて後手でのブレークに成功。持ち時間を1時間35分も残す圧勝だった。

 第36期、中村修九段(60)による24歳4カ月の最年少王将防衛を20歳7カ月に更新すると同時に、タイトル戦は初出場から敗退なしの12連勝。通算12期獲得は歴代8位で18世名人の資格保持者・森内俊之九段(52)に20歳で並んだ。

 王将奪取で始まった専守防衛の一年は、王将防衛で5冠を堅持し、反転攻勢へ移る。19日は2勝1敗で王手の棋王戦第4局、4月からは名人戦。例年秋開催の王座戦で全8冠独占が視界に入る。開幕前、今期の意気込みを記す揮毫(きごう)を「初心」とした。この日その選択を振り返り、「分からない局面が多く、将棋の奥深さを感じた。盤上に没頭して指すことができたかなと思う」。分からないから分かりたい。分からない限り、その前進は続く。(筒崎 嘉一)

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