羽生善治九段 全勝で挑戦権! 藤井王将とドリームマッチ実現 通算100期目を懸けタイトル戦初激突

[ 2022年11月23日 05:10 ]

サッカーボールを手に、挑戦者として意気込む羽生九段(撮影・河野 光希)
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 将棋の第72期ALSOK杯王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)挑戦者決定リーグの最終一斉対局は22日、東京都渋谷区の将棋会館で3局を行い、羽生善治九段(52)が豊島将之九段(32)を下して6戦全勝となり、来年1月開幕の7番勝負に7期ぶり19回目の出場を決めた。藤井聡太王将(20)=竜王、王位、叡王、棋聖含む5冠=とはタイトル戦初激突。藤井は初防衛を、羽生はタイトル獲得通算100期目を懸ける注目のシリーズとなる。

 寄せに出た羽生の85手目▲3四角を指す右手の指は細かく振動していた。小刻みに何度もうなずく。117手で豊島を下した午後6時38分。今を時めく藤井とのタイトル戦初邂逅(かいこう)がついに決まった瞬間だ。

 「大変なリーグ戦の中で結果を出せて非常にうれしい。全勝も全然想定していませんでした。結果的にいい形でリーグを終えてよかった」

 内容的には豊島の犯した序盤の失着から大差がついた進行だったが「まとめ方がよく分からなかった」と慎重に持ち時間を消費した。腰を落として熟考を重ね、読みを入れてからさらに確認作業を続ける。99手目▲4四馬と金を入手して「多分勝ちになっていたのでは」。勝ちを急がず、外堀を丹念に埋めきっての白星に納得の表情だ。

 リーグ全勝での挑戦権獲得は延べ9人目。タイトル戦出場そのものも2年前の竜王戦以来。ファン待望のカード実現だ。

 17年にデビュー以来負けなしの29連勝をマークした藤井に対し、羽生はタイトルを徐々に失い、4年前にはついに無冠に転落。順調に戴冠を重ねる藤井との立場は完全に入れ替わった。「自分の結果が伴っていない中で、タイトル戦での対決は現実的に難しいと思っていた」と実直な心境を明かす。フェードアウトして藤井とすれ違いに終わる可能性が徐々に高まっていくなかで、永世7冠のレジェンドはかくも見事に復活した。

 さあドリームシリーズ。藤井とは過去1勝8敗と相性は悪いものの「対戦してみないと分からないところも多々ある。番勝負が始まっていくなかで体感したい。自分自身の棋力を充実させて臨むということに尽きます」と、肩に力の入らない決意表明が逆に力強い。

 タイトル獲得通算100期に向けては「達成できればうれしいが、今はとにかく実力を上げるだけです」。威勢のいい言葉はなくとも、充実ぶりは存分に伝わってくる。まばたききすら許されない熱い7番勝負は来年1月8日に幕を開ける。

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