矢沢永吉 他界した恩人たちへ思い込め全22曲熱唱 デビュー50周年記念ツアー最終公演

[ 2022年9月26日 05:30 ]

50周年ツアー最終公演で熱唱する矢沢永吉(撮影・ひらの たかし)
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 ロック界のカリスマ、矢沢永吉(73)のデビュー50周年記念ツアーの最終公演が25日夜、大阪・京セラドームで行われた。4万人を前に50年の歴史をひもとくように熱唱。定番のタオル投げも起きた中、2時間20分にわたって歌いまくり「矢沢は本当にファンの皆さんに愛されてると思いました」と感謝。ファンをはじめ「多くの人たちとの出会いあっての50年だった」と幸せをかみしめていた。

 人生の集大成となったツアーの最終公演。客席への第一声は「国立競技場から始まって先週の福岡。矢沢は本当にファンの皆さんに愛されていると思いました。だから50年走ってくることができたんですね」と感謝の言葉だった。

 オープニング曲はフォーク歌手の故西岡恭蔵さん(享年50)が作詞したダンディーなロックナンバー「苦い雨」。その後も中盤で「黒く塗りつぶせ」、本編ラスト「逃亡者」、アンコール最後に「トラベリン・バス」と、要所の曲は西岡さんと70~80年代に生んだ名曲群。73歳とは思えない圧倒的な声量で歌いまくった。

 矢沢を取材してきた中で忘れられない場面がある。99年に西岡さんが自ら命を絶った時。愛妻に先立たれ、子供2人を残しての悲劇。米国で訃報を知った矢沢は緊急帰国。西岡さん宅に現れた時の形相はすさまじく、テレビカメラを押しのけ「お前らのエサになるために来たんじゃねえ!」と激怒した。

 無言の西岡さんとの対面。矢沢は高校生と大学生の子供2人を抱き締めると「いくつになった?」と年齢を確認。「だったら、やれるよな?兄弟2人で力を合わせるんだ」と声を掛けた。8歳で両親を失い、兄弟もいなかった自身の境遇から出た言葉だった。

 矢沢はこの日のステージで、西岡作品以外にも故山川啓介さん作詞「チャイナタウン」「ひき潮」、故ちあき哲也さん作詞「止まらないHa~Ha」「BIG BEAT」などを歌唱。既に他界した同世代の恩人たちへの思いが全22曲に込められた。ツアー前のスポニチ本紙の取材にも「いろんな人と出会い、学んだ50年だった」と振り返り、今の心境を「感謝」と端的に表現した。

 その意味でツアー最終地の大阪は、かつて矢沢が一部ファンの迷惑行為でライブ会場が使用できない悩みを抱えていた中、84年に大阪城ホールが初の使用許可に踏み切ってくれた「恩」ある街。その時にアンコールで歌ったのがソロデビュー曲「I LOVE YOU,OK」。矢沢はさまざまな思いを込めるように、アコースティックギターだけの弾き語りで歌い上げた。

 B’z、MISIAとの共演など「感謝」の思いが「伝説」となった50周年。次は前人未到の日本武道館での通算150回公演が待っている。(阿部 公輔)

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2022年9月26日のニュース