「全ウルトラマン大投票」 番組サイトが示す熱量

[ 2022年8月17日 08:30 ]

「全ウルトラマン大投票」サイトの「ウルトラ怪獣」投票のページ(C)円谷プロ
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 【牧 元一の孤人焦点】NHK・BSプレミアムの特番「全ウルトラマン大投票」(9月10日後10・00)の番組サイトが面白い。

 「あなたの好きなウルトラヒーロー」「あなたの好きなウルトラ怪獣」「あなたの好きなウルトラメカ」の3部門で投票する仕組み。例えば「ヒーロー」部門で「ウルトラセブン」に投票しようとクリックすると、ウルトラセブンの写真4枚とともに「エメリウム光線、ワイドショットなどの光線技に加え、頭部のアイスラッガーも自在に操る」などと記された解説が出てくる。

 何より興味深いのが「怪獣」部門だ。例えば、1966~67年に放送された「ウルトラマン」は約55年後の現在、名前と容姿が一致しない怪獣も少なくないが、ここには全ての怪獣・宇宙人の写真が掲載されており、懐かしく思い出すことができる。「バルタン星人」に加え「バルタン星人(二代目)」、「ダダ」に加え「ダダ上司」なども候補に挙がっているところが通好みだ。

 番組の制作統括の柏木敦子さんは「データベースを作るのに苦労しました。番組本来の目的からはややずれるかもしれませんが、サイトを見るだけで、『あの怪獣はいるかな?』『あ、いた!』などと楽しんで頂くことを目指しました」と話す。

 「大投票」シリーズは2017年の「発表!あなたが選ぶアニメベスト100」以来、今回で10回目。これまで「ガンダム」「エヴァンゲリオン」「仮面ライダー」などを取り上げてきたが、毎回、投票内容(例えば仮面ライダーは『作品』『仮面ライダー』『音楽』の3部門)が異なるため、データベースは多種多様だ。

 番組プロデューサーの西村崇氏は「ウルトラマンは特に怪獣の数がとても多い。そのまま並べると2000ではすまないので、『同一個体の除外』などの基準を設けて数を絞り込みました。それでも1500を超えているのですが、選別の中で『これを除外して良いのか?』という議論もありました」と明かす。

 例えば「ウルトラマンT」に登場した「エレキング」。この怪獣は元々、「ウルトラセブン」に登場したものだが、「ウルトラマンT」の中で「メフィラス星人」(初登場は「ウルトラマン」)や「ベムスター」(初登場は「帰ってきたウルトラマン」)などと前後して再登場していた。「ウルトラマンT」の「怪獣」部門の中で「メフィラス星人(二代目)」「ベムスター(改造)」などは候補に挙がっているものの、「エレキング」は含まれていない。

 西村氏は「メフィラス星人は二代目、ベムスターは改造だが、エレキングは再生しただけで個体が変化していない。そういう基準で除外になりましたが、ファンの残念な気持ちは分かります」と話す。

 柏木さんは「そういう議論が打ち合わせのたびにあって、なかなかデータが決まらないという懸念があった」と明かし、西村氏は「私が力説しすぎて、後ろを振り向くと誰もついて来ていないということもあった」と苦笑いする。マニアックな議論の末の作成。だからこそ、このサイトは面白く、番組の熱量の高さを示しているとも言える。

 サイトでは「ヒーロー」の11位~20位、「怪獣」の11位~20位、「メカ」の4位~10位が中間発表されている。「怪獣」の11位に「ジャミラ」、12位に「メフィラス星人」、19位に「ピグモン」が入っているところがオールドファンとしてはほほえましい。

 投票期間は今月21日午後11時59分まで。柏木さんは「毎回、上位の方はあまり入れ替わらない傾向がありますが、10位~20位あたりは逆転する傾向があります。今回、特に怪獣の票が割れているので、この先、順位が変わっていくと思います」と指摘し、西村氏は「まずはぜひサイトの中をさまよって頂きたい」と呼び掛ける。

 スペシャル動画として公開されている「ヒーローの技」「クイズ」「怪獣しりとり」なども味わい深い。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。

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