橋田さん 質の高い完成度の理由 アドリブは一切許さず、セリフは一字一句正確に

[ 2021年4月6日 05:30 ]

脚本家で劇作家の橋田寿賀子さん
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 朝のテレビ小説「おしん」、大河ドラマ「いのち」「春日局」と、1980年代のNHKのドラマの代表作を執筆した橋田さん。特に三田佳子主演の「いのち」は、時代劇から近代路線に変更し「山河燃ゆ」「春の波濤」と2作続けて大きく低迷した視聴率と大河人気を救った功績は極めて大きかった。

 1年物の「おしん」はもちろんのこと、アドリブは一切許さず、しかも一字一句セリフを正確に再現することを求めた。その厳しい姿勢が作品の質と完成度を維持していたのだろう。そんな橋田さんだから、会見や懇親会に出席した時にはいつもにこやかな表情だったが、取材する側にとっては気が抜けない、とても怖い存在でもあった。

 一度、大河の次回作について確認のため東京・麹町のマンションにアポなし取材にうかがったことがある。深夜まで帰宅を待ち、怒鳴られることを覚悟で話しかけたところ、意外にも穏やかに、丁寧に対応していただいた。その時、あらためて橋田ファンになったことを思い出すが、もう橋田さんに会えないのは悲しい。もう一度、ゆっくりドラマの極意をうかがいたかった。合掌。(元放送担当記者・島倉 健治)

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2021年4月6日のニュース