「ひよっこ」舞台・茨城が熱い!ロケで活気 過疎地から「可愛さ」発信

[ 2017年4月25日 08:20 ]

茨城の自然をバックに撮影に臨んだ有村架純は笑顔
Photo By 提供写真

 NHK連続テレビ小説「ひよっこ」(月〜土曜前8・00)の舞台は茨城県。19年ぶりの日本出身横綱となった稀勢の里の故郷でもあり、全国魅力度ランキング最下位の“ジミケン”がいま大いに沸いています。今週末から主人公が上京する“第2章”が始まる中、知って楽しいドラマの隠れた魅力を6日間にわたって紹介します。心地よい春の朝が毎日待ち遠しくなりますよ。

 見渡す限り、山と田んぼと畑が広がっていた。日本の原風景が今も残る茨城県高萩市の山間部。入り組んだ山道を分け入っていくと、ヒロイン・みね子の実家のモデルとなった農家がポツンとある。近くに住む鈴木直登さん(69)は「50年前から景色は変わらんねぇ。電柱が木から鉄になったくらい」と田んぼの方へ目を向けた。

 一方で利便性とはほど遠く、山間部の人口流出は止まらない。直登さんは「60年代は小中学校でも1学年30人以上いたのに、この前も小学校が廃校になってしまってね」と話すように、若い世代はほとんど都会へ向かい、過疎化は深刻だ。

 そこにやって来た朝ドラのロケ。地域は一気に活気づいた。住民は撮影に全面協力し、エキストラとしても積極的に参加した。直登さんは「通院の約束をほったらかして撮影に来るじいさんもいたよ」と苦笑い。放送が始まると、放送時間中は誰も外出しない。直登さんの同級生で同じくロケ地近くに住む鈴木勝一さん(69)は「みんなBS、朝、昼と3回見てるからこの付近では視聴率300%だわ」と笑顔だ。さらに茨城出身の稀勢の里が今年1月の初場所で初優勝&横綱昇進。勝一さんは「なんか茨城に盆と正月がいっぺんに来たみたい」と喜んでいる。

 舞台が茨城となったのは、脚本の岡田惠和氏と制作スタッフが話し合い「東京へ行ったヒロインが帰りやすそうだけど帰れない、ほどよい距離感」から決まった。高度経済成長期の1960年代でも東京からそれほど遠くはなく、都会の喧騒(けんそう)に疲れたヒロイン・みね子がいざとなったら英気を養うために帰ってこられる、そんな設定にしたかった。

 そして大切な場所である実家の雰囲気も「みね子に共感する視聴者が思わず笑顔になるような、現在で言う“可愛い”を表現したかった」(ドラマ美術担当)という。番組スタッフは360度見回しても現代の建物がない場所を前提に、20軒程度を下見。中でもモデルとなった高萩市の農家は赤い屋根がとてもキュートで「スタッフのほとんどが、あれしかない!イメージにぴったり!と感嘆した家だった」という。

 小粋なポストや玄関先の風見鶏、子供たちが遊ぶ手作りの鉄棒などを美術スタッフが用意して、実家の可愛らしい外観は出来上がった。しかし、クランクイン当初は朝ドラヒロインの重圧からか、有村架純(24)の表情が硬いときもあった。それを解きほぐしたのが実際に農家に住む老夫婦。近くで採れた山菜料理を振る舞い、会話を重ねていると、有村から自然と笑顔がこぼれるようになった。ある日、有村は宿舎があるにもかかわらず夫婦に「きょう一人でここに泊まっていい?」と聞いた。みね子と同化した瞬間だった。

 有村は田舎の健康的な高校生になりきるために約5キロ増量した。ビジュアルも重要な女優にとってはちょっとした決意。共演する宮本信子(72)も「みね子ちゃん、いいわねえ」と絶賛。地元では「稀勢の里のようにみね子も粘り強く頑張るはず」と期待の声が上がっている。

 ≪6市町合同で推進協議会≫行政も「ひよっこ」とともに町を盛り上げようと躍起だ。高萩市内では至るところに「ひよっこのロケ地」をアピールするのぼりが立つ。また高萩市や常陸大宮市など県北6市町は合同で「茨城県北ひよっこ推進協議会」を発足した。観光者向けの土産品に貼る「ひよっこ」ロゴマークを作成するなどロケ地であることをPR。担当者は「観光促進や地域活性につなげたい」と話すとともに、「いずれはロケ先を巡るツアーなども立ち上げたい」と話している。

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