三段跳び・山下 父の日本記録塗り替えるか…思い出す30年前のあの日

[ 2016年7月27日 11:15 ]

陸上・三段跳び男子の山下航平(左)と女子ゴルフの大山志保

 8月5日に開幕する夏季五輪のリオデジャネイロ大会で、気になる選手が2人いる。

 一人は陸上・三段跳び男子の山下航平(21)=筑波大=。本人には会ったことはないけれど、父親の訓史さん(54)は何度か取材している。ご存じ、1988年ソウル、92年バルセロナの両五輪で日の丸を付けたトリプルジャンパーだ。

 86年6月1日、旧国立競技場で陸上の日本選手権を取材していた際の話。競技を終えた選手をスタンド裏で囲んでいたら、雷のような大歓声が場内から沸き起こった。「何なんだ?」。あわててフィールドサイドに戻ると、山下(父のほう)がスタンドに向けて笑顔を振りまいている。電光掲示板を確認すると「17・15M NR」の文字。ナショナルレコード、つまり日本記録だ。しかも日本人初の17メートル台。動転した筆者は取材中の短距離選手(高野進さんでした)のことなどすっかり忘れて山下のインタビューに向かった。

 後日、確か8月頃だった。アポをとってじっくりと単独取材した時のこと。用意していた質問を終え、さあ写真撮影…とカメラを取り出したら「すいません、きょうは跳びません」と、申し訳なさそうな表情を浮かべる。「休みなんです。でも休むのも練習の一部ですから」。現在で言うところのアクティブ・レストについて丁寧に説明してくれた。一年中休むことなくトレーニングに励むのがトップアスリートだと勝手に勘違いしていた身には、ものすごく新鮮なレクチャーだった。

 その彼の息子が、同じ種目で五輪に出場する。ちなみに前述の日本記録は30年間も破られないままだ。4年に一度の大舞台で、愛息が自分の勲章を塗り替えるとすれば、これ以上のドラマはない。同い年の筆者も父親のような気分で応援したい。

 もう一人はゴルフ女子の大山志保(39)。こちらは1999年の日米大学ゴルフ選手権(栃木・ヴェルデ佐野)で取材した。

 当時は日大4年生。名門大学の中心選手なのに、いわゆる体育会のにおいが全くない、ぼくとつとした選手だった。出身地・宮崎のイントネーションで、おっとりと、やわらかく話す。プレー中には対戦相手の米国選手と言葉を交わす場面があり、そのことを尋ねると「アメリカの大学ってどんな感じ?学生生活って楽しい?」など、ひたすらゴルフ以外の質問を投げかけていたんだとか。好奇心旺盛の、ごく普通の女子大生といった感じ。

 「ちょっと仲良くなったので、大学での専攻は?って聞こうと思ったんですけど、専攻って英語が分かんなくて。なんて言うんですか?」と、今度はこちらに振ってくる。「ええっと…メジャー、じゃないの」とあやふやに答えたっけ。取材なのになぜかほっこりした気分になる選手。まさか五輪でも日本代表になるとは、その頃は1%も思わなかった。

 ゴルフは男子を中心に出場辞退が相次いだが、大山はリオ行きを決めた理由として「私の中ではメジャー大会より五輪が上」と言いきったという。おお、筆者が17年前に教えた英単語をしっかり覚えていたんだな…違うって。

 と、昔の事をあれこれ思い出していたら、だんだん疲れてきた。どうやらアクティブ・レストが必要のようだ。

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2016年7月27日のニュース