「真田丸」PR動画「ダメ田十勇士」生んだ江口カン氏とは? 

[ 2016年3月24日 10:00 ]

NHK大河ドラマ「真田丸」のスピンオフ動画「ダメ田十勇士」の企画・脚本・演出を手掛けた江口カン氏

 NHK大河ドラマ「真田丸」(日曜後8・00)のスピンオフ動画「ダメ田十勇士」が24日午後10時55分からNHK総合でプライムタイム初放送される。2月29日も午後10時35分からオンエア予定だったが、女子サッカーのリオデジャネイロ五輪アジア最終予選「日本―オーストラリア」の中継が延びたため、中止に。今回、待望の仕切り直しとなる。笑って泣けると評判を呼ぶ動画の企画・脚本・演出を務めたのは映像作家・江口カン氏。2020年東京五輪招致VTRも手掛け、世界を魅了しながら、福岡を拠点に活躍する異色のクリエーターとは?

 「ダメ田十勇士」は本編「真田丸」には登場しない名もなき8人の“勇士”が主人公。慶長20年(1615年)、大坂夏の陣の開戦前夜。8人の足軽たちは豊臣方の陣の片隅で酒盛りをしていた―。出演は博多華丸(45)矢本悠馬(25)岩井秀人(41)鈴木拓(40)脇知弘(35)梅垣義明(56)松村邦洋(48)Mr.オクレの8人。動画としては大作(13分9秒)に仕上がり、昨年12月にYouTubeで公開された。

 江口氏は2009年、相模ゴム工業のコンドームのCM「LOVE DISTANCE」でカンヌ国際広告祭グランプリ(金賞)に輝くなど、その名はCM界にとどろく。13年には、九州発として注目を集めた博多華丸主演のドラマ「めんたいぴりり」(テレビ西日本)の監督を務めた。

 昨年は、街中の人たちが突如野球を始めるトヨタ自動車のティーザーCM「TOYOTA G’s Basaball Party」を企画・演出。MLB公式サイトで取り上げられ、タレントの稲村亜美(20)がOL姿で話題の「神スイング」を披露したのも、このCM動画だった。

 福岡生まれ。大学進学にあたり、映像の世界は「おもしろく生きていけるかも」と九州芸術工科大学(画像設計学科)を選んだ。思えば、幼少期から絵を描くのには苦労せず、美術の成績はよかった。友人からホームビデオカメラを借り、初めて撮った映画は「ロッキー」のパロディー。「おもしろかった」。

 大学時代、世はバブル。学生だったが、仕事が舞い込んだ。「何となく食べていけるかな」と就職はせず、フリーから始め、1997年、30歳の時、大学時代の友人らと映像制作会社「KOO―KI」を共同設立した。

 「それまでは、自分は特に“これだ”というものはなかったですから。(好きなもの、得意なものに)出会ったというか、見つけられたというのは幸せですよね」

 福岡在住で活動。09年に福岡市文化賞、11年に福岡県文化賞を受賞した。取材の度に福岡にいる理由を聞かれるが、実は20代後半の時、上京を考えたことがあった。

 「(東京の制作会社など関係者に)作品を見せに行っても、作品のいい悪いじゃなく『今(の年齢)から東京でやっても厳しいよ』と冷たくされて。あまりよくない人たちに当たったんですね」と笑って振り返った。「映像はおもしろければ、国境すら超えていくわけですよ。だとすれば、作る場所はどこでもいいんじゃないかなと思って。1つの実験だと思って。福岡は住みやすいし、メシもうまいし、好きなところに住んで好きな仕事ができるというのは、ありがたいですよね」。売れっ子になった今は、忙しい時は毎週のように上京。「結局、東京に来ているんですけどね」と再び笑いを誘った。

 今後の活動については「一度、長編に本気で向き合わないとダメだなと思っています。できるところまで、それでやってみようかなと」と語り、次の長編ドラマも準備中という。その意味でも、今回の“短編”「ダメ田十勇士」は貴重な作品になった。今回のプライムタイム(午後7~11時)放送には「そもそも“裏な人たち”の話。表舞台に出ることになり、親としてはうれしい限りですね」と喜んでいる。

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