なぜ「下町ロケット」に共感したのか 珍しくドラマに夢中 中高年男性の存在

[ 2015年12月21日 11:39 ]

「下町ロケット」最終回のヤマ場、佃(阿部寛)VS椎名(小泉孝太郎)(C)TBS
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 20日放送のTBS系日曜劇場「下町ロケット」(日曜後9・00)の最終回(第10話)の平均視聴率が、今年の民放連続ドラマ最高の22・3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録した。高い視聴率と人気を支えた背景の一つに、仕事での「夢」を熱く語る、阿部寛(51)演じる佃航平に共感した、普段はドラマをあまり見ない中高年視聴者の存在があった。

 「72歳の父は佃製作所よりも小さい町工場を経営していた。そんな父が毎週日曜日、テレビの前でじっと下町ロケットを見ていた。ドラマなんて時代劇ぐらいしか見ない父が…。番組が終わると、無言でしばらく動かないが、なんだか目がうるんでいるようで」と話すのは、家族で「下町ロケット」を観賞していたという、東京都江戸川区の男性(38)。この男性の父親のように、中高年層の熱心な視聴者だったという傾向がうかがわれる。

 TBSの公式ホームページにある「ファンメッセージ」を見ると、中高年、特に佃製作所のような町工場で働く、あるいは働いていたという技術者からの投稿も目立つ。また、データニュース社(東京)のテレビ視聴アンケート「テレビウォッチャー」(対象3000人)によると、最終回直前の第9話(12月13日放映)では、番組を見たという50歳以上の男性接触数は全体の約21%。ドラマを日常的に見る35~49歳女性の約19%を上回り、50歳以上の女性層ともほぼ変わらない数値を記録。最終回でもその傾向は変わらないようだ。

 日本の事業所規模別構成比(2013年、日本国勢図会)によると、佃製作所のような中小の工場(事業所、従業員数299人以下)が全体の99・2%を占め、大工場は1%に満たない。中小工場の従業者数も全体の70%を超え、いわば多くの人が、それぞれ作っているものは違えど、佃製作所のように日々奮闘しているのである。「どんな難問にも必ず答えはある」「挫折を経験したことのない者は、何も新しいことに挑戦したことがない者だ」「技術は嘘をつかない」夢、プライド…。ドラマではあるが、佃社長の立場がよく分かるからこそ、その言葉に胸を熱くし、涙を流しながらうなずいた人も多かったはずだ。

 誰もがかっこいいヒーローになれるわけではないし、いい年をして挑戦なんて…という声も聞こえてくる。それでも「自分にも何かできるかもしれない」と、視聴者にもう一度思い起こさせるきっかけになったドラマだったからこそ、今年1位の視聴率という有終の美を飾ることができたのではないだろうか。

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