勘三郎さんに見せたい勘九郎&七之助の成長…大評判の追善興行

[ 2014年11月12日 10:55 ]

追善興行の製作発表会見に出席した中村七之助(左)と中村勘九郎

 この2年のうちに中村勘三郎、市川団十郎の大看板を相次いで失った歌舞伎界。主役が張れる役者の中で最も客を呼べる2人と言われていただけに、松竹関係者は「興行的には大変な痛手だ」と頭を抱えていた。そんな不安の声をよそに昨年4月に新しい歌舞伎座がオープン。蓋を開ければ、ファンやごひいき筋の応援などもあって期待以上の開場ブーム、連日満席が続いた。

 ところが、新劇場も2年目になると、ブームも一段落。「出ている役者によってはお客さんの入りが苦しい時もありますね。期待がかかる市川海老蔵でも満席にならないことがあります。やはりお客さんの数字が確実に見込めた勘三郎、団十郎の穴は大きい」と演劇評論家。ここ数カ月、客席には徐々に空席が目立ってきたのも事実だ。特に世話物、時代物、舞踊などあらゆるジャンルをこなし、世代を問わず人気のあった勘三郎がいなくなったショックは、時が経てば経つほど興行上に切実な影響を及ぼしている。

 それに加えて、役者として一番油が乗った時期、勘三郎と同世代の坂東三津五郎、中村福助も闘病中。完全復帰のめどが立っていないことも相当痛い。

 一方で料金が高すぎると嘆くファンも多い。1等席は1万8千円、2等席でも1万4千円。1階桟敷席ともなれば、2万円となる。「芝居を見て食事をしたら1人で2、3万円近くかかります。家族で来たら10万円ぐらいかかりますよ。もう少し安いといいのに」。観劇料が敷居を高くしているとも言えそうだ。

 ただ、厳しいことばかりではない。新たなスターが誕生しつつある。今月、新橋演舞場で新派に初出演している中村勘九郎と七之助だ。祖父(十七世)、父(十八世)の2人の勘三郎の追善でゆかりの演目「鶴八鶴次郎」に挑戦。心底好きあっているのに仲違いして別れてしまう昔気質の男女を熱演。主役の勘九郎は、台詞回し、舞台上での細かい仕草まですべてが父親そっくり。「まるで十八代目が演じているようだ」と製作スタッフ。女形の七之助の艶のある美しさはこれからさらに磨きがかかりそうだ。

 最近は客入りが心配される新派だが、この兄弟の出演で連日満席に近い状態が続いている。これに先立ち先月、歌舞伎座で行われた追善興行も大評判。長年、歌舞伎を取材している専門誌の記者は「人気、実力ともこの2人が歌舞伎の将来を背負っていくのではないか。三代続けて素晴らしい役者が出る家は珍しい」と話している。

 先代勘三郎がこの世を去って早や2年。きっと息子たちの成長を喜んでいるに違いない。

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2014年11月12日のニュース