元芸人が描くおもしろミステリー 藤崎翔氏「神様の…」書籍化

[ 2014年6月30日 07:52 ]

長編ミステリーが書籍化される藤崎翔氏はVサイン

 元芸人の作家藤崎翔氏(28)の初の長編ミステリー「神様のもう一つの顔」が9月に書籍化される。4月に第34回横溝正史ミステリ大賞(KADOKAWA・角川書店主催)を受賞。作家転身後も「“おもしろ”を作りたい」という“芸人魂”を貫いた結果が実を結んだ。

 8歳から芸人に憧れ、お笑いコンビ「セーフティ番頭」として6年間活動。4年前に限界を感じ解散し、作家に転身後も笑いには貪欲だ。

 作品は、「神様」のように慕われていた中学の元校長の通夜に集まった弔問客らの思い出話で構成。話していくうちに、故人のもう一つの顔が浮かび上がってくる。登場人物が「心の声」で読み手を笑わせる。

 トレードマークは中学生の頃から変わらない丸刈り頭。取材で服装について尋ねると、「超有名ブランド」と前置きした上で「ユニクロで上下合わせて3000円です」とかしこまった。大賞で賞金400万円を獲得しても「芸人時代から生活は変わってない」と苦笑。時給1200円の早朝ビル清掃が主な収入源。杉並区阿佐谷の家賃4万5000円の1Kアパートで暮らしている。

 「神様…」の下書きを始めた昨年7月は猛暑続き。金も無く電気代節約のためエアコンを一切使わなかった。水を20センチほど張った風呂に体育座りで全裸で漬かりながら、膝の上に置いたチラシの裏紙にペンを走らせた。“下半身の筆”を水中で泳がせながらの“チン筆法”は「本当に涼しかった。さすがに清書はテーブルの上でしましたけどね」と振り返った。

 若手芸人にとって厳しい環境が続く中、路線変更で成功例を示したが「もっと才能ある人が小説に飛び込んでこないことを祈ります」とジョーク。創作意欲は止まらず「ネタ切れは当分起こしそうにない。いまは5年分くらいある」と意気揚々と語った。

 ◆藤崎 翔(ふじさき・しょう)本名同じ。1985年(昭60)10月9日、茨城県生まれの28歳。竜ケ崎第一高卒業後、04年に東京アナウンス学院に進学。在学中にお笑いコンビ「セーフティ番頭」を結成。唯一のテレビ出演はNHK「爆笑オンエアバトル」。「キングオブコント2009」2回戦敗退。元相方三島ゆういちはピン芸人として活動中。1メートル66、57キロ。独身。血液型O。

 ▽横溝正史ミステリ大賞 50年以上にわたり探偵小説を精力的に執筆し続けた横溝正史さんにちなんだ公募新人文学賞。未来のミステリー作家発掘を掲げ1980年からスタート。大賞受賞者には金田一耕助像と賞金400万円が贈られる。第2回では阿久悠さんが「殺人狂時代ユリエ」で大賞に輝いている。

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