役所広司 井上靖さんになる!自伝的小説を映画化

[ 2011年2月12日 06:00 ]

 俳優の役所広司(55)が、「敦煌(とんこう)」など多数の作品を世に送り出した文豪・故井上靖さんを演じる。映画「わが母」で、井上氏の自伝的小説「わが母の記」が原作。母親役を樹木希林(68)、娘役を宮崎あおい(25)が務め、映画「クライマーズ・ハイ」などで知られる原田眞人監督がメガホンを取る。来年公開予定。

 「わが母の記」は老いで記憶をなくしていく実母の姿を、井上氏が温かな目線でつづった作品。実母が89歳で亡くなるまでの約10年間の介護生活を通して、両親と離れて育った幼いころの記憶や実母への複雑な愛情などが描かれている。

 同作の映画化は、井上氏と同じ沼津東高卒の原田監督が10年来、温めてきた企画。故小津安二郎監督や山田洋次監督(79)の作品に代表される「家族の絆」をテーマにした映画をお家芸にしてきた松竹が製作を決めた。同社では「介護や家族愛を描く今作が、無縁社会や孤独死という現代的な問題を考える上でもヒントになるのでは」としている。

 今月3日にクランクイン。撮影は主に、東京都世田谷区に現存する井上氏の邸宅の応接間や書斎を使って行われる。同じ敷地内には井上氏の息子が暮らしているが、父親の人生をテーマにした作品が映画化されることを喜んでおり、快く貸し出しが了承された。着物姿の役所が書斎に入ると、昭和の文豪がその場によみがえったようだったという。

 ほかにも、実際に井上氏の父親が眠る静岡・湯ケ島の墓や、家族旅行をした川奈ホテルなどでのロケを予定。子供時代の撮影も、伊豆や沼津などにある井上氏ゆかりの地で行われる。「クライマーズ・ハイ」で新聞社の編集局を再現するため、約50人の俳優全員にニックネームや趣味を設定して役作りさせた原田監督らしい“リアル”へのこだわりを見せる。

 原田監督は「主人公のイメージは最初から役所さんでした」と起用理由を説明。井上氏を模した伊上洪作役を演じる役所は「“老い”はどのように母を変え、それを見つめる家族が、どのように変わっていくのか。心温まる家族の絆を、心を込めて演じたい」と意気込んでいる。海外映画祭への出品も視野に入れている。

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2011年2月12日のニュース