74歳で長女誕生 人間国宝 中村富十郎さん逝く

[ 2011年1月4日 07:17 ]

亡くなった中村富十郎さん

 明快なせりふと舞踊の巧みさで知られた歌舞伎の人間国宝で文化功労者の中村富十郎(なかむら・とみじゅうろう、本名渡辺一=わたなべ・はじめ)さんが3日午後8時28分、直腸がんのため東京都中央区の聖路加国際病院で死去した。

 81歳。東京都出身。葬儀・告別式の日取り、喪主などは未定。
 女形として活躍した四代目中村富十郎の長男で、母は舞踊家の故吾妻徳穂さん。1943年、坂東鶴之助を名乗り、大阪・中座で初舞台。演出家武智鉄二の実験歌舞伎で大役を演じた。64年六代目市村竹之丞、72年五代目富十郎を襲名。
 はっきりしたせりふ回しと切れのいい演技で時代物、世話物、新作、所作事と幅広い芸域を誇り、立役を中心に数多くの役柄を演じて高い評価を受けた。当たり役に「勧進帳」の弁慶、「船弁慶」の静御前と知盛の霊、「加賀鳶」の道玄など。
 舞踊の名手としても活躍。自主公演「矢車会」を主宰し、初代富十郎が初演した「娘道成寺」など、ゆかりの芸の継承にも努めた。
 欧米を中心に歌舞伎の海外公演にもたびたび参加。新東宝、日活の時代劇や「写楽」「学校2」など映画でも活躍した。NHK大河ドラマにも多く出演し、「勝海舟」(74年)と「獅子の時代」(80年)で西郷隆盛を演じた。
 芸術選奨文部大臣賞や芸術祭優秀賞、日本芸術院賞を受賞。94年人間国宝となり、96年日本芸術院会員、2008年には文化功労者に選ばれた。
 03年、74歳の時に女児が誕生し話題になった。昨年11月の歌舞伎公演を、体調不良のため休演していた。

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2011年1月4日のニュース