10

[ 2010年8月21日 06:00 ]

父ウォルフガング・ワーグナーの後を受けて共同監督を務めるエーファ(左)とカタリーナの異母姉妹(C)Bayreuther Festspiele GmbH 

 こうした新機軸を打ち出しているのはウォルフガングの娘で昨年から、父の後任として共同監督に就任していたエーファとカタリーナの異母姉妹。戦後のバイロイトを支えたワーグナーの孫であるヴィーラント、ウォルフガング兄弟が共同で監督を務めた“先例”に倣ったかのような新体制。エーファが主に運営を、カタリーナが演出などの芸術面を担当している。そのカタリーナが自ら演出した「ニュルンベルクのマイスタージンガー」も今年で4年目となり、「リング」と同じく磨きをかけられてきた印象が強い。特に音楽面ではそれが顕著。ヴァイグレの透明感にあふれた、あまりワーグナーらしくない音楽作りが、ティーレマンによる濃厚な響きの「リング」と好対照を成す形となり、耳に新鮮に届いた。バイロイト祝祭劇場の特殊なアコースティックを意識して極限まで彫琢したサウンドは、ワーグナーに不可欠といわれる重厚さをほとんど感じさせないものだが、斬新な演出と相まって、こういうスタイルもありかなと妙に納得させてくれたのも事実だ。

 ヴァルター役のクラウス・フロリアン・フォークトを中心とするキャストもザックスら一部の役で入れ替えが行われた結果、アンサンブル面で一層のきめ細かさが生まれることとなった。

続きを表示

2010年8月21日のニュース