[ 2010年5月9日 06:00 ]

コミカルな演技で観客を魅了したデスピーナ役のロドリゲス(中央、磁石の女性)彼女の足もとにも黒子が…。※公演写真はすべてサントリーホール提供

 正直に言いますと「コジ・ファン・トゥッテ」という作品自体は、「フィガロの結婚」などのモーツァルトの他の作品に比べるとストーリー面だけでみると他愛のない話のように感じました。しかし、音楽面に関しては声楽、オーケストラともにさまざまな要素が盛り込まれており、モーツァルトの充実期の豊かな技法がいかんなく発揮された作品であることもよく分かりました。これらのことがストレートに伝わってきたのはやはりホール・オペラという上演形態だからこそ、だと思います。

さらにフィオルディリ-ジを演じたセレーナ・ファルノッキアのアリアは情感に満ちて美しかったし、マルクス・ヴェルバ(グリエルモ)、フランチェスコ・デムーロ(フェッランド)、そしてダヴィニア・ロドリゲス(デスピーナ)らの歌手陣も見事な歌唱で聴衆を魅了、また時には達者な演技で会場を笑わせてくれました。全体を俯瞰してみると、完成度の高いステージであったことはもちろんですが、観客・聴衆に楽しい時間を過ごしてもらいたい、とのルイゾッティやラヴィアをはじめとする制作に関わったすべての人々のこのステージにかける思いが如実に伝わってくる公演でありました。

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2010年5月9日のニュース