森光子 放浪記中止に「相当寂しそう」

[ 2010年2月27日 06:00 ]

森光子の舞台「放浪記」中止について会見する東宝の増田憲義専務取締役演劇担当

 女優の森光子(89)が5、6月に東京・日比谷のシアタークリエで予定していた主演舞台「放浪記」の上演が中止されることになった。製作の東宝が26日、発表した。「4時間の大作に連日出演するのは体に差し障りがある」という主治医の判断を森が受け入れた。単独主演2017回を記録するライフワーク。東宝は「“放浪記”が終わるわけではない。体の状態を見てまたお願いしたい」としている。

 1961年10月20日の初演から49年。5月5日から44回が予定されていた2カ月公演中の5月9日に、90歳の誕生日を舞台で迎えるはずだった。
 森は報道陣やファンにあてた手紙の中で「役者にとって舞台を休むことにまさる苦しみはございません」と残念がった。「放浪記」は上演時間3時間50分と、現在の商業演劇では異例の長さ。しかも森が演じる林芙美子は出ずっぱり。これまでも、無事務めあげられるのか「毎夜毎夜考え悩みました」とプレッシャーと戦い続けていたことも明かした。東京・丸の内の帝劇9階稽古場で会見した東宝の増田憲義専務取締役演劇担当(63)は「森さんは相当寂しそう。落ち込んでいる」と説明した。
 長期公演の前には都内の総合病院で定期検診を受けるのが恒例。今回は今月18日に受診。病気は見つからなかったが、4人で構成する専属医師団は、ハードな舞台に連日出演するのは「体に差し障りがある」と提言。翌19日に医師団、東宝、森の所属事務所関係者で協議し中止を決定した。20日にマネジャーから知らされた森は「皆さんがそこまで配慮してくださっているとは。うれしい」と最終的に受け入れた。
 増田氏は「検査数値に異常はなく、日常生活には支障がない」と強調。一方、終戦直後に森が肺結核を患った際、肺を片方失っていたことも明かした。「2017回の上演は、1つの肺にとっては4034回働いたことになる」と気遣った。
 10年ほど前、上演時間短縮や林芙美子の少女時代を若手が担当することを提案したが、森から「作品を曲げてまで上演しなければならないときは私が女優をやめるとき」と、きっぱりと断られた。07年11月に、でんぐり返しを封印するなど若干の手直しはしてきたが「今回、演出を変える選択肢はなかった」という。
 森は一昨年秋の大阪、名古屋公演では輝きが影を潜め、ファンからは心配の声があがっていた。しかし昨年5月の帝劇公演では、同9日の89歳の誕生日に上演2000回を達成した後も、周囲の懸念をよそに気力が充実。千秋楽の29日には国民栄誉賞受賞が決定し輝きを取り戻した。それだけに増田氏は「今後の上演にも希望を持っている」とした。代替公演は今後、調整する。

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2010年2月27日のニュース