どうして?「ワンピース」勝手にどんどん売れていく 

[ 2009年12月5日 12:49 ]

書店では「ONE PIECE(ワンピース)」の最新刊が並んだ=東京・新宿の紀伊国屋書店新宿本店フォレスト

 海洋冒険漫画「ONE PIECE(ワンピース)」(集英社)の人気が止まらない。4日から全国の書店に並んだ最新刊(第56巻)の初版部数は、コミックス史上最多の285万部。第1巻からの累計は1億7600万部に上る。夢と冒険を描くシンプルな物語が、なぜ今、受けるのか。

 東京の紀伊国屋書店新宿本店フォレストの売り場では同日、若い女性や男子高校生らが次々と、平台に積み上げられた最新刊を手に取った。男性会社員(40)は「最初から読んでる。毎回感動します」。
 ▽勝手に売れる
 悪魔の実を食べ、体がゴムのように伸び縮みするようになった主人公ルフィが海賊王を目指し、「ひとつなぎの大秘宝」を探して航海する物語。島から島へ移動して敵と戦い、仲間を全力で守り、世界のなぞが少しずつ判明していく。
 1997年に「週刊少年ジャンプ」で連載開始。コミックスの初版部数は2002年の第24巻で井上雄彦さんの「スラムダンク」を抜いて以来、自己記録を更新し続ける。ある書店担当者は「勝手にどんどん売れていく」と舌を巻き、出版関係者は「怪物状態の売れ方だ」と言う。
 テレビアニメもフジテレビ系で放送され、約10%の高視聴率(関東地区)。映画化10作目の「ストロングワールド」(12日公開)には、水泳金メダリストの北島康介さんらが声優として特別出演。「連動してコミックスもさらに売れるのでは」と関係者は期待する。
 作者の尾田栄一郎さん(34)は「15歳の自分がわくわく興奮するかどうかを常に基準に、描いてきた。人気は運と思っています」と話す。読者は男女半々、小学校高学年から40代後半という。
 ファンの反応は「ゴムで体が伸びるなどのアイデアが面白い」(14歳男子)、「キャラクターがかわいい」(22歳女子大学生)などさまざま。
 特に「仲間に対する絶対の友情」(23歳女性)「冒険と友情の懐かしいテーマ」(48歳男性)と、キャラクター同士の友情に支持が集まる。
 自身も愛読者という「ONE PIECEぴあ」(ぴあ社)の編集者小林美姫さんは、「仲間と冒険する物語だけにキャラクター同士の結び付きが強い。友情やきずなといった物語の普遍的要素が、現代でも感動を呼ぶのでしょう」と分析。漫画家のいしかわじゅんさんも「シンプルでわかりやすい物語の構図」が人気の理由と指摘。基本を踏まえたオーソドックスな物語づくりと言える。
 「仲間を裏切らない明快さ、展開の速さが、ストレートなものを求めるネット世代の感性にも合うのでは」(書店の担当者)との指摘もある。

続きを表示

2009年12月5日のニュース