「こんなにひどいとは」死亡女性父 無念の涙

[ 2009年10月24日 06:00 ]

 押尾被告と現場マンションに一緒にいて死亡した飲食店従業員田中香織さん(30)の父親が23日、初公判を傍聴した。押尾被告が田中さんの異変に気付いたにもかかわらず現場から立ち去ってしまったことに「どうして救急車を呼んでくれなかったのか」と涙ながらに無念な思いを吐露。「(娘には)まだ何も報告できない」と悔しさをにじませた。

 田中さんの父親はこの日、岐阜県の自宅から上京。後方の傍聴席に座ると、押尾被告の背中を食い入るように見つめていた。

 終了後、報道陣の取材に応じ、傍聴した感想について「判決がまだなので何も言えません」と険しい表情だった。被告の供述調書で、田中さんが現場でMDMAを複数回使用し容体が悪化したにもかかわらず、押尾被告が「使用がばれる」と考えて別の部屋に移ったことなどが明らかにされると、かなりの衝撃を受けたようで「こんなにひどいことだと思いませんでした」と苦しい胸の内を語った。

 その目に涙があふれ「押尾被告の姿を見て私が思うことは、娘が(容体が)悪くなった時、どうして救急車を呼んでくれなかったんだ(ということ)、それだけです」と声を震わせた。

 押尾被告の言葉に誠意を感じたかという質問には、むせび泣きながら「そんなことを考える余裕はありません」とし、謝罪の言葉についても「ありません」と悔しさで唇をかんだ。そして「(娘には)まだ何も報告できない」と無念さをにじませた。

 田中さんの遺族はマスコミに向けて「娘が亡くなったことについては、いまだ深い悲しみが消えません」と記した文書を配布。空白の3時間については押尾被告からこの日、説明されることはなかった。「なぜ119番通報するまでにあれだけの時間がかかったのか」「もう少し早く適切な医療措置が講じられていれば、娘が亡くなることはなかったのではないか」と疑問は晴らせないまま。「真実が明らかになることを切に望んでいます」と語気を強めた。

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2009年10月24日のニュース