緒形拳さん 悲喜劇体現した希少な俳優

[ 2008年10月7日 09:52 ]

緒形拳さんが急死…先月末には元気な姿も

 5日急逝した緒形拳さんは、悲喜劇を同時に体現できる数少ない俳優だった。数々の映画に焼き付けてきた独特の演技には、観客が簡単に飲み下せない骨太さがあった。
 新国劇で上演された後に映画化された「遠い一つの道」でスクリーンデビュー。新人王の座を目指す学生ボクサーの役だった。ぎらぎらした瞳の奥にあったのは同世代の人々と同様、少年期に味わった飢えの記憶だったのかもしれない。
 1960年代後半からは、社会に巣くう悪や市井に生きる人々の悲劇を描いた社会派作品で名声を確立。松本清張原作、野村芳太郎監督の「砂の器」で好人物の警官に扮し、「鬼畜」では愛人に生ませた子どもたちを手にかける小心な男を絶妙なバランスで演じた。
 佐木隆三さんのノンフィクション小説を原作にした「復讐するは我にあり」では、殺人を繰り返して逃亡する冷血な人物を、人間味をのぞかせながら表現した。
 2000年以降も「歩く、人」「長い散歩」などで海外で評価された作品に主演。ごつごつしながら、ひょうひょうとした魅力を持つ緒形さんは、日本映画にとってなくてはならない存在だった。

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2008年10月7日のニュース