40年目の「寅さん」 NYでも特集上映

[ 2008年7月25日 08:42 ]

 「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です」の口上で始まる人情喜劇映画「男はつらいよ」。配給元の松竹は、今年を第1作の公開から40年目の節目と位置付ける。8月には主人公の「フーテンの寅」を演じた故渥美清さんの13回忌の献花式も開催。国民的人気を集めたこのシリーズは、日本人にとってどんな存在なのか。

 1969年公開の第1作「男はつらいよ」は「フーテンの寅」が約20年ぶりに故郷の東京都葛飾区柴又にある、だんご店に戻ったところから始まる。異母妹のさくらや近所の人々、旬の女優が演じた「マドンナ」とドラマを繰り広げるシリーズは95年の第48作までに計8000万人(松竹調べ)の観客を集めた。
 松竹は8月から11月にかけて、高画質、高音質の「HDリマスター版」のDVDを発売。記念の特集上映を8月から東京・築地の東劇で、9月から全国の劇場で行う。ニューヨークなど海外でも特集上映を展開する。
 地元の柴又での行事もめじろ押しだ。8月2日には「葛飾柴又寅さん記念館」で、96年に亡くなった渥美さんの13回忌の献花式を行う。映画では笠智衆さんが住職を演じた帝釈天題経寺では、同27日、第1作の野外上映会も。
 松竹大船撮影所で使われただんご店「くるまや」のセットや名場面の映像を見られる記念館には、年間20万人前後が訪れる。総括責任者の村上健二さん(61)は「映画とともにある記念館。自分なりの思い出を持って帰ってほしい」と話す。
 「くるまや」の舞台は、京成電鉄金町線の柴又駅から帝釈天へ延びる参道。土産店や飲食店がひしめく町は、映画によって一挙に有名になった。「この町の良さを映画に教えてもらった」と話すのは、地元商店でつくる「柴又神明会」の石川宏太会長(55)だ。地元では、東京都や葛飾区の支援を受け、映画が誕生した69年前後の街並みの再現に取り組む。
 石川会長が現在経営するだんご店は、毎回撮影の拠点になっていた。「あの映画を見ること自体が、大事だったように思う。人と人との触れ合いがなくなりかけていた時代に、映画がつなぎとめてくれた気がする」
 葛飾区で育ち、映画に先立つテレビシリーズ時代から「寅さん」に親しんだフォークシンガーのなぎら健壱(56)は「優しさとか人情、節度ある男と女が出てくる恋愛など、日本人が失ったものを求めて、人気が高まっていったのでしょう。けれど今は、人情をはぐくむ町の形態がすっかり変わってしまった。もはや願望に近い、日本人の心の原風景がありますね」と話している。

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2008年7月25日のニュース