市川崑監督密葬…棺には愛用タバコ

[ 2008年2月16日 06:00 ]

 肺炎のため13日に92歳で亡くなった市川崑監督の密葬が15日午後1時半から、東京・渋谷区のカトリック渋谷教会でしめやかに営まれた。長女の舞子さんが幼少の頃に描いた監督の絵が遺影代わりに飾られ、棺の中には「どら平太」の台本などが納められた。一方、都内のホテルで開かれた第31回日本アカデミー賞授賞式では冒頭、3台の大型モニターに追悼文が映し出された。

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 自宅そばの教会で営まれた密葬は、故人の遺志で長男・建美氏(62)ら親族のみ計約10人で営まれた。前日14日には「金田一耕助」シリーズなどに主演した石坂浩二(66)らが弔問。85年の「ビルマの竪琴」に主演した中井貴一(46)も駆けつけた。
 渋谷のパルコ劇場で舞台「二人の約束」に主演中の中井。悲報を受け、13日に同劇場で行った会見では「監督も“仕事を優先しろ”とおっしゃっていたので、落ち着いたら会いに行きたい」と話しており、直接お別れを告げたかったようだ。禁煙前、監督が吸っていたキャメル1カートンを持参し、関係者に「棺の中に納めてください」と言い残していったという。
 この日、出棺に際しては「どら平太」とリメークした「犬神家の一族」の台本、「1カートン入れちゃうと監督が煙たがるだろう」(関係者)との配慮で、キャメル1箱が納められた。市川組スタッフらが見守る中、遺体を乗せた車は教会から自宅前を通り、東京・渋谷区の代々幡斎場に向かい、巨匠はだびに付された。
 密葬に続くように午後4時から始まった日本アカデミー賞授賞式では、冒頭に異例の追悼文が表示され、会場は神妙な空気に包まれた。俳優陣は演出の関係で登場していなかったが、映画関係者や列席したファンはじっと画面を見つめた。
 市川監督が死去したのは授賞式の2日前。準備が多忙を極める中でも、主催者は14日に急きょ対応を協議。関係者によると「追悼の文書を配布するのか掲示するのかなど議論を重ねた」という。最終的には、恒例となっている日本アカデミー賞協会の高井英幸会長のあいさつ文に続ける形で落ち着いた。
 毎年11月初旬には各賞ノミネートや特別賞が固まっており、今回のようなケースは31回を数える同賞授賞式で初めてという。関係者は「来年は物故者に授与される会長特別賞が贈られるでしょう」と話した。

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2008年2月16日のニュース