小百合 恩師・市川監督へ吉報送る

[ 2008年2月15日 06:00 ]

ベルリン国際映画祭の公式上映を前に赤じゅうたんを歩く吉永小百合。左端は山田洋次監督

 第58回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門に出品された「母(かあ)べえ」の公式上映が13日(日本時間14日)、メーン会場のベルリナーレ・パラストで行われた。主演の吉永小百合(62)はドイツ語であいさつ、現地の観客を驚かせた。一方、市川監督が亡くなったことについて「言葉にならないくらいつらい思い」と胸中を明かした。

 上映が終わると、1600席がほぼ埋まった会場は、約3分半、盛大な拍手に包まれた。感激の面持ちで舞台に立った吉永は、メモを見ながら「15年ぶりにベルリンに来られてうれしいです。山田洋次監督が“母べえ”を通してスタッフや俳優の心を1つにしてくれました。それを見ていただけてうれしいです」とドイツ語であいさつ。ベテラン女優の思わぬ演出に観客は大喜び。ひときわ大きな拍手が送られた。
 第2次世界大戦に翻弄(ほんろう)された家族の物語のため、「あまり華美になりたくない」とふじ色の着物で参加。直前には“恩師”ともいえる市川監督の悲報が飛び込み、言葉をなくしていた。それでも、激動の時代を子供を守りながら生き抜いた役どころと同様、気丈さを見せて堂々と登壇。観客の温かい反応にほっとした表情を浮かべた。
 公式上映などすべての日程を終えて、日本の報道陣向けに会見。市川監督と今年の正月に年賀状のやりとりをしたことを明かし「くせのあるまあるい文字でお返事をいただいて、お元気なんだなと思っていたので驚きました」と肩を落とした。80年代に4本の市川作品に出演し「最近“またやりましょう。こんな企画はどうだろう”とお話をいただいたけど実現しなくて…。私の出た映画を見て寸評をくださったり、私にとって支えでした。そんな方がいなくなったと思うと、言葉にならないくらいつらい思いです」と涙を浮かべた。
 ベルリンは、市川監督が00年に特別功労賞にあたるベルリナーレ・カメラ賞を受賞した縁のある映画祭。吉永は93年に主演作「夢の女」がコンペ部門に出品されて以来、15年ぶりで「あの時は1人で来てひっそりとした感じだったので、本格的に国際映画祭に参加するのは初めての気分。ほとんどお上りさんのよう」と感激ぶりを表現した。
 審査結果の発表は16日(日本時間17日)。「山田監督を胴上げする」と宣言しており「ベルリンの人が心から迎えて下さったと感じました」と好感触を得ていた。

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2008年2月15日のニュース