浜田剛史氏　明暗分けた立ち上がり　尚弥の“スリリングな圧勝”ドネア沈めた冷静なカウンター

WBA・WBC・IBF世界バンタム級王座統一戦12回戦   ○WBAスーパー＆IBF王者・井上尚弥　TKO2回1分24秒　WBC王者ノニト・ドネア● （ 2022年6月7日    さいたまスーパーアリーナ ）

1回、ドネアからダウンを奪う井上（手前）
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　【浜田剛史の目】結果は井上の圧勝だったが、立ち上がりはスリリングな状況だった。最初にダウンを奪った1回2分50秒までの流れを見ると、序盤にしても中盤にしても、一発で決まる可能性は十分に感じられた。

　井上の右カウンターはタイミングが抜群だった。あの一発の布石はドネア側にあった。おそらく、ドネアはすぐに勝負が決まると思っていなかったのではないか。本来は相手を引きつけて左フックを狙うパターンを得意とするが、立ち上がりに脅かして井上を前に出させない作戦に。ところが、スタートに成功し、体も軽いし、動く。そこで行き過ぎた部分があった。

　井上はドネアの出方を見て、攻めることより、まずは相手を止める状況をつくろうとした。その流れから、あの右は出た。ダウンを奪った後は攻め急いでしまうこともあるが、井上は行き過ぎることなく、緩めることなく、冷静に判断しながら攻めた。ドネアにしてみれば、ダメージを回復させながら、前に出てくる井上の隙を突いてカウンターを狙うしかない状況だったが、それも許さなかった。

　井上本人も話していたが、ここまできたら4団体統一を実現してほしい。多くのファンも期待していると思う。（元WBC世界スーパーライト級王者）