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寺地拳四朗観戦記 実は「怖いな」と思っていた再戦なのに…井上選手はやっぱり強い

[ 2022年6月8日 05:30 ]

WBA・WBC・IBF世界バンタム級王座統一戦12回戦   ○WBAスーパー&IBF王者・井上尚弥 TKO2回1分24秒 WBC王者ノニト・ドネア● ( 2022年6月7日    さいたまスーパーアリーナ )

2回、ドネアにTKO勝利した井上(右)
Photo By 代表撮影

 今年3月にWBC世界ライトフライ級王者に返り咲いた寺地拳四朗(30=BMB)が、さいたまスーパーアリーナで行われたバンタム級3団体王座統一戦を生観戦し、初挑戦の観戦記をスポニチ本紙に寄せた。世界戦で勝者と敗者、両方の立場から再戦を経験しており、2度目の対決に挑んだ両雄に自身を重ねた。

 いやぁ~、やっぱり井上選手は強いですね。短い時間の中で、いろいろ駆け引きはあったと思いますけど、圧倒的でした。1回にダウンを奪って流れをつかんだというか、ドネアをのみ込んでしまった感じです。あの後は接近戦でも怖さを全く感じていないように見えたし、さすがと言うしか言葉がないです。さらに一段レベルが上がった感じがしました。

 実は、再戦は怖いなと思っていました。初戦の後半にドネア選手がどんどん良くなっていって、戦いながら相手を読む力が凄いなと感じたからです。ずっと右を狙っていて、最後の方に効かせたじゃないですか。考えていることを実行に移せる遂行能力が凄かったです。初戦で相手の力が分かって対策も練ってきたと考えると、前回よりも難しい試合になる気がしていました。

 僕は世界戦で、初戦に勝った再戦と、負けた再戦の2種類を経験しました。世界王座を獲ったガニガン・ロペス選手(メキシコ)とは2度目の防衛戦でも戦いましたが、初戦が2―0の判定とギリギリだったので、また判定かなと思っていたらボディーで2回KO勝ち。1度勝っていたので多少余裕が出て、でも接戦だったから怖さもありました。練習で僕の距離感が初戦よりも良くなっていて、相手はやりにくかったのかもしれないです。

 矢吹正道選手に負けてからの再戦は勝つしか選択肢がなかった。モチベーションどうこうではなく、人生を懸けた試合という感じでした。初戦は体が浮いていることが多く、パンチをもらうと見栄えが悪かったので、まずは徹底的に直して、上体が沈んだまま打てる体勢も重点的にやりました。距離感が変わるのはかなり難しかったけど、リングに上がった時はぶっ倒すという気持ちだけでした。ドネア選手も負けたら引退の可能性があるので死に物狂いで再戦に来たんだと思います。

 ベルト統一は正直、うらやましいし、僕も続きたい。本来は統一戦を入れながら防衛を続ける計画でしたが、負けて防衛回数記録がなくなったので、今の目標は統一戦一本。タイミングもあって簡単ではないのは分かっていますが、同じ階級には負けたくない。もっと簡単に統一戦ができる仕組み、つくってほしいです(笑い)。(WBC世界ライトフライ級王者)

 ◇寺地 拳四朗(てらじ・けんしろう)1992年(平4)1月6日生まれ、京都府城陽市出身の30歳。奈良朱雀高―関大。アマ74戦58勝(20KO)16敗。14年8月プロデビュー。15年12月に日本ライトフライ級王者、16年8月に東洋太平洋同級王者。17年5月、プロ10戦目でWBC世界同級王座を獲得して8度防衛も、21年9月に矢吹正道(緑)に10回TKO負けで陥落。今年3月の再戦で3回TKO勝ちして王座を取り戻した。1メートル64の右ボクサーファイター。父・永(ひさし)BMBジム会長は元東洋太平洋ライトヘビー級王者。

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