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尚弥 これぞMONSTER!日本人初の3団体統一、ドネアを2回TKO返り討ち バンタム級に敵なし!

[ 2022年6月8日 05:30 ]

WBA・WBC・IBF世界バンタム級王座統一戦12回戦   ○WBAスーパー&IBF王者・井上尚弥 TKO2回1分24秒 WBC王者ノニト・ドネア● ( 2022年6月7日    さいたまスーパーアリーナ )

1回、ドネア(左)に右ストレートを見舞う井上(撮影・島崎忠彦)
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 井上尚弥(29=大橋)が日本人初の3団体統一王者となった。2年7カ月ぶりの再戦となったノニト・ドネア(39=フィリピン)を2度倒して2回1分24秒TKO勝ち。WBA王座7度目、IBF王座5度目の防衛に成功し、WBC王座を獲得した。今後は年内に実現するのならばWBO同級王者ポール・バトラー(33=英国)との4団体王座統一戦、実現しなければスーパーバンタム級に挑戦する意向を明らかにした。

 ドラマが急展開したのは1回、残り10秒だった。井上の右クロスがカウンターでドネアのこめかみに突き刺さった。前回の雪辱に燃え、開始から攻め立ててきた5階級制覇の英雄が、一瞬でキャンバスに崩れ落ちた。

 2回はさらに一方的になった。左フックを叩きつけるとドネアの体がグラグラと揺れる。ボディーを入れ、ワンツーを決め、最後に左フックで2度目のダウンを奪うと、レフェリーが即試合を止めた。計264秒。この日、急きょ中止になった4、8回終了後の途中公開採点も結果的に必要なかった。36分間かかった初戦とは対照的な圧勝に、井上も「夢みたいです」と興奮を隠せなかった。

 絶好調宣言とは裏腹に、調子はこの3年間で一番悪かった。部位は不明ながら、1カ月前から痛めている部分があったという。さらに初回、いきなりドネアの左フックを右目付近にもらった。前回、右眼窩(がんか)底を骨折して苦戦の原因となった一撃で「目が覚めた」とスイッチが入った。「余裕を持って進めるためにも、1回は絶対に取る」とラスト10秒でダウンを奪い、最後はドネアのまねで練習していた左フック。「当て返してやろうという気持ちはあった」と笑った。

 初戦の激闘は不本意だった。試合前は「今回はドラマにはならない」「自分との戦いを最後に花道をつくる」「4団体統一への通過点」と強気な発言で自分にプレッシャーをかけた。だが、世界王者になって以来、対戦相手に恵まれなかった井上にとってドネアはモチベーションをかき立ててくれる存在だった。「ドネアだったからこそ自分はここまで燃えることができた。ドネアと戦えたことを誇りに、この先進んでいきたい」と感謝した。

 世界主要4団体のうち3つのベルトを手にした。残るはバトラーの持つWBOだけ。井上は「4団体統一戦が年内にかなうなら、まだバンタム級で戦う。かなわないならスーパーバンタム級に上げたい」と明言した。再戦へ向け、ジム先輩の元3階級制覇王者・八重樫東トレーナーが考案したフィジカル強化の「八重トレ」を今年から導入。八重樫氏がボクシングに直結するように工夫したメニューに取り組んだのは、将来のスーパーバンタム級挑戦を見据えたものだ。4団体でも、4階級でも、モンスターには次のドラマを演じる準備ができている。

 ▽初戦VTR 19年11月7日、さいたまスーパーアリーナで、ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)バンタム級決勝として対戦。2回にドネアの左フックを被弾したWBA正規&IBF王者の井上が右眼窩(がんか)底などを骨折しながらも、11回に左ボディーでダウンを奪取。レフェリーが井上の追撃を制止した上にカウントのスタートも遅く“幻のKO”となったが、3―0の判定勝ちでドネアからWBAスーパー王座を奪った。

 ◇井上 尚弥(いのうえ・なおや)1993年(平5)4月10日生まれ、神奈川県座間市出身の29歳。新磯高(現・相模原弥栄高)時代に高校7冠などアマ通算81戦75勝(48KO・RSC)6敗。12年10月プロデビュー。14年4月にプロ6戦目でWBC世界ライトフライ級王座獲得。同12月にWBO世界スーパーフライ級王座を獲得し、8戦目で2階級制覇。18年5月、WBA世界バンタム級王座を獲得して3階級制覇達成。19年5月にIBF同級王座獲得、同11月にはWBSSバンタム級トーナメント優勝。身長1メートル65、リーチ1メートル71の右ボクサーファイター。

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