守りの野球に改革か、伝統の強打か―。2年間迷い続けた盛岡大付が見つけた「低反発バット攻略法」
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アマチュア野球の指導者らに采配やチーム運営などについて、インタビューする連載「指導者の思考法」。第15回は春夏合わせて16度の甲子園出場を誇る盛岡大付(岩手)の関口清治監督。24年春から導入された低反発の新基準バットにより、伝統の強打が鳴りをひそめていたが、ついに「攻略法」を見つけ出した。(取材 アマチュア野球担当キャップ・柳内 遼平)
――28日は春季岩手県大会の盛岡地区代表決定戦が行われ、9―0の8回コールド勝利で県大会進出を決めた。
「勝つことはできましたが、正直なところ、前半にもう少し点を取れたはずだ、という思いが強いです。例えば1死三塁の場面で走者を還せなかった。かと思えば、2死から3連打で1点を取る粘りも見せる。選手たちには試合後に“なぜもっと楽な場面で取れないのか。その攻撃は高いレベルの投手相手でも通用しただろうか”という問いかけをしました。夏の甲子園という目標を口にする以上、細かなプレーや“詰め”にこだわらないといけないと伝えました」
――選手には常に甲子園基準を求めている。
「その通りです。“今のバントはもし、ピッチャーが花巻東の萬谷君だったらアウトだったんじゃないか”というように、常に自分たちより高いレベルを基準にしてプレーの価値を判断してほしいと思っています。この世代のチームは一冬を越えて、ようやく戦える集団になってきたという手応えがあります。去年の秋は本当に勝負弱くて、序盤に点を取られるとすぐにひるむチームでした。実際に秋の大会では一関学院さんに初回と2回で5点を奪われ、エースが後続をゼロに抑えたものの、反撃は1点のみ。結局、そのまま1対5で敗れてしまいました。それではいけないと冬の間、甲子園で逆転劇を演じた先輩たちの映像を何度も見せながら“俺たちも打つチームを目指さなきゃダメなんだ”という意識を植え付けてきました。その成果は練習試合で形になりつつありますが、公式戦特有の空気や緊張感の中で、いかに勝負強さを発揮できるか。これからの試合を通じて経験を積み重ねていくことが重要だと考えています」
――24年春に低反発の新基準バットが導入。打ち勝つ野球だった盛岡大付にとっては逆風だった。
「はい。かなり悩みました。新基準バットは本当に飛ばないので“これはもう守備を固めて投手力で勝つ野球に切り替えるべきか”と考えた時期もありました。以前のチームならば簡単に外野フライで1点を取ることができた場面で、力のない浅いフライになってしまう。それを見て“やはりスクイズや細かい作戦が必要なのかな…”と。自分の理想とする野球と、現実との間で2年ほど迷いが生じていましたね」
――迷った末の結論は。
「結論から言うと“もう一度、低反発ではない時代の打力に近づける”という方針に決めました。そして最近、この新基準バットには明確な“攻略法”があることに気づいたんです。きっかけは選手たちの変化でした。どんなにパワーがあっても、このバットになった途端に打てなくなる選手がいる一方で、むしろ非力だと思っていた選手がこのバットで驚くほど飛ばすことがある。中には前のバットより飛距離が出ているんじゃないか、と感じる選手もいたんです。彼らをじっくり観察する中で答えが見えてきました」
――その答えとは。全部は明かせないと思うので、企業秘密の一部を教えてください。
「このバットはただ当てるだけでは飛びません。重要なのはボールに対するバットの“入射角”、そしていかにボールとの“接着時間”を長くするかにあります。この仮説にたどり着いたのが去年の暮れです。この冬、その理論を信じてチームで試してみたところ、見事にハマった感覚があります。今年の3年生は例年に比べて体が大きいわけではありませんが、春先からホームランが続出していて“あれ、新基準バットってこんなに飛ぶんだっけ?”と私自身が驚いているくらいです。ある程度の力を持った選手がこの技術をマスターすれば、前の金属バットと同じくらい打てるのではないか、という手応えを感じています」
――スモールベースボールではなく、打ち勝つ野球で甲子園を目指す。
「その通りです。周りがそうだからこそ、我々は打ち勝つ野球で突き抜けたい。“あのチーム、前のバットを使っているんじゃないか?”と相手に思わせるくらいのチームをつくりたい。もう一度、チーム全体で打撃に目覚めたいと思っています」
――その道を突き進む上で花巻東というライバルの存在は大きい。
「もちろんです。花巻東さんは菊池雄星(エンゼルス)君の時代から我々の力を常に引き上げてくれた特別な存在です。当時は“菊池を倒すために何をすべきか”を考え抜き、そして大谷翔平(ドジャース)君が出てきた時は“大谷を打つためにどうすればいいか”を徹底的に考えさせられました。彼の存在は、我々のチーム方針を大きく転換させるきっかけにさえなったんです」
――大谷選手の存在がチームを変えた。
「はい。それまでのウチはどちらかと言えば守備を第一に考えていました。しかし“守り合いをして、あのレベルの投手に勝てるのか?”という根本的な問いにぶつかったのです。大谷君からヒットを3本続けて点を取るなんて現実的ではない。そこで至った結論が“長打2本で1点”、あるいは“ホームランで1点”という発想でした。シングルヒットでランナーを出して送りバント、というセオリーでは彼がギアを上げたらまず点は取れない。ツーアウトからでも長打2本で1点を奪う。それくらいの打力が必要だと。大谷選手の3年夏の決勝戦(5―3で勝利)ではその方針が得点に結びつきました。後の佐々木朗希(ドジャース)君と対戦した時も、長打を絡めて勝利しています。甲子園の好投手を打ち崩すにはやはり長打が不可欠。その信念は今も変わりません。もう一度、あのレベルの打撃力を、今のチームで実現したいんです」
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