【内田雅也の追球】勝負の日常が始まった。

[ 2026年3月28日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神1―3巨人 ( 2026年3月27日    東京ドーム )

初回、松本剛に11球粘られ、四球を与えた村上
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 敗戦後の通路を真っ先に出てきた阪神オーナー・秦雅夫はこちらを見て、少し顔をゆがめた。試合前に出くわし「ではまた、勝利の後で」と変な約束をしていた。苦笑いするしかなかった。

 ただ、当たり前のことだが、勝負の世界では勝つこともあれば、負けることもある。確かに開幕戦は特別な雰囲気が漂うが、負ければ「143分の1」と考えればいい。

 大リーグ300勝投手で、アメリカ野球殿堂入りをしているアーリー・ウィンは強気の投球が評判だった。その剛腕が「開幕戦は他の試合とは違う。特別な興奮に胸の鼓動が早まる」として語っている。「もし勝つことができれば、それはシーズン全敗はしないということだ」。ただ、それだけ。1勝を記しただけなのだ。逆に負ければ1敗しただけである。

 毎日試合があるペナントレースである。勝って浮かれず、負けて落ち込まず、平常心を保つのがプロなのだろう。

 むろん監督・藤川球児も承知している。「まあ、始まったばかりですから」と話した。「一つ、明日取りにいくと。これ、勝負ですから。また明日ですね」

 試合は巨人の新戦力にやられた。新人の竹丸和幸に6回3安打1点に抑えられた。村上頌樹は初回先頭弾を浴びた後、日本ハムからFA移籍した松本剛に11球粘られ四球を与えたのが響いた。直後のヒットエンドラン(右前打)で無死一、三塁となり2点目につながった。4回裏には新外国人ボビー・ダルベックに本塁打を浴びた。8回を封じられた北浦竜次も日本ハムを自由契約となり新入団した左腕だった。

 ただし、昨年優勝チームの阪神もただ負けたわけではない。村上は6回裏1死二、三塁、一塁が空いている状況で、前の打席で本塁打を浴びていたダルベックに勝負を挑んだ。四球OKの配球で三振を奪いにいき、見事奪ってみせた。

 9回表無死一塁、一発同点の局面で打席に立った佐藤輝明は無念の遊ゴロ併殺打に倒れた。この悔しさこそが糧となる。

 プロ野球について、作家・伊集院静は<日々、勝者と敗者は生まれる。今日は敗れたが、明日は必ず打ち砕いてやる>と書いた=『逆風に立つ』(角川書店)=。作家・重松清は<勝敗が日常の一部になる>と書いている=『うちのパパが言うことには』(角川文庫)=。今年もまた、始まった。 =敬称略=
 (編集委員)

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