【社会人野球の“20年マネジャー”前編】プロの夢断念から始まった裏方人生 日本新薬・小西伸幸
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社会人野球の日本新薬に10年選手ならぬ、超異例の“20年マネジャー”がいる。2007年1月からチーム運営に携わる小西伸幸チーフマネジャー(46)だ。今年で、その道20年目を迎えた裏方の、これまでの歩みや仕事への取り組み方にスポットライトを当て、紹介する。前後編の前編。(惟任 貴信)
例年、年末の12月から年始の1月にかけてが、社会人野球各チームの新体制が固まる時期だ。勇退選手や監督交代、新加入選手などが続々と発表される中、ある裏方の“続投”も決まった。今年でマネジャー業20年目に入った日本新薬・小西チーフマネジャーだ。
兵庫県加古郡稲美町出身。公立の東播磨高では2年秋からエースとなったが、3年夏は兵庫大会初戦で敗れた。当初は「体育教師か公務員になろうと思って」体育学部のある天理大に進学。そこで頭角を現した。最速145キロのスリークオーター右腕として3年秋、4年春に最優秀投手賞獲得など阪神リーグ通算20勝をマーク。その投球を見た日本新薬関係者から声がかかり、02年4月、社会人野球の門を叩いた。その頃には目標の中に「プロ野球選手」も加わっていた。
だが、すぐにアマチュア球界最高峰のレベルを痛感させられた。「ある程度、ストライクゾーンに速い球を投げ、変化球を投げていたら抑えられていた」大学時代までの投球はまったくと言っていいほど通用しなかった。少しでもコースを間違うと確実に捉えられ、狙い過ぎると自滅につながった。「社会人野球って、こんなに奥が深く考えないといけないのか」。投球以前に、体の使い方から学び直す必要があった。「今の自分の考え方では高校野球の監督なんて絶対無理」。プロ野球選手の前に、体育教師として高校野球の監督をするという選択肢を、脳内から消した。
それでも、入社1年目から公式戦に登板。「とにかく3年間はプロを目指したい」とガムシャラに腕を振った。体が悲鳴を上げたのは、2年目の終わりだった。投球中に違和感を覚え、ボールが握れなくなった。病院での検査結果は、投球過多による血行障害と右手中指の疲労骨折だった。それでも気を取り直し、投げられない3年目は、復帰へ向けて筋力強化とともに投球フォームを見直す期間に充てた。ところが、いざ投球を再開すると、これまで投げられていたはずのボールが投げられなくなっていた。試合で投げることに恐怖すら覚えるようになり、以降はほとんど公式戦登板のないまま5年目を終えた段階で、肩を叩かれた。
引退を告げられたときは「正直、ホッとした」という。野球部を引退した社員は当時、営業職に回るケースが多く、自身もそうなると思っていた。だが違った。「来年からマネジャーをしてくれないか?」。会社側からの打診に、一度は断りを入れた。当時の大橋成行マネジャーの仕事ぶりを見ており、「休む暇もなく、あんなに大変な仕事は自分にはできないと思いました」。しかし「誰でもできる仕事ではない。自分がチームに必要とされているのであれば…」と思い直し、引き受けることを決めた。
07年1月からマネジャー転身。初仕事は…「道を覚えること」だった。日本新薬は専用球場を所有せず、練習、試合は基本的にビジターとなるが、「当時は野球部の車にカーナビが付いていなかったんです」。練習、試合に使用する球場や社会人、大学チームのグラウンドへの道順を覚えることが最初の仕事になった。移動バスの運転もマネジャー業務の一つだったからだ。「分かりません」は通じない。引き継ぎ期間中、大橋マネジャーが運転するバスの助手席でひたすらノートに道順を書き込み、頭に叩き込んだ。昨年からチームバスの運転は専属の運転手に任せている。「僕が運転するのはリスクもあるし、選手も安心して乗車できますからね」。そう話した上で、「でも、あのノートは今も持っていますよ」と笑った。20年に及ぶ歩みの“原点”となっている。
「昔は体調不良でも休めなかったですね。自分が休むと球場に行けず、チームに迷惑がかかると思ったので」。ただ、これも“入り口”に過ぎなかった。多岐にわたる社会人野球のマネジャー業とは。(後編に続く)
◇小西 伸幸(こにし・のぶゆき)1980年(昭55)2月21日、兵庫県加古郡稲美町出身。稲美中では軟式野球部に所属。東播磨高では1年秋からベンチ入りし、2年秋からエース。3年夏は県大会初戦敗退。天理大では3年秋、4年春に最優秀投手賞を獲得するなど阪神大学野球リーグ通算20勝。02年に日本新薬に入社。07年からマネジャー転身。所属は総務部野球活動推進室。右投げ右打ち。
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